第9話 激闘


「 わたしのターン、ドロー! 」


 上空からラビリーズがひゅ――んと落ちてきて、ぎゅっと抱きとめる。


(……この子兎カードは……!)


 さらにぎゅぅぅっと抱きしめると、ラビリーズは光の粒子になり、目の前に集まり人型になっていく。


「わたしは、『月姫かぐや』を召喚します!」


 和風の着物を身に纏った、兎耳のお姫様がステージに降臨した。


【 月姫かぐや レベル7 属性 光 】



 ――観客席から、戦いを見守っていた『竹月 かぐや』は瞳を見開いた。


「あのモンスターは……。大会前にあたしが渡したカード……」


 そしてカメラを構え――。


「頑張れ、うさぎ……」


 緊張した面持ちで愛しい親友をレンズに捉えた。



「――月姫かぐや、ウンディーネに攻撃!」  


 月姫かぐやは両手の中に、50cmほどの月のボールをつくり。


「 ムーンアタック! 」


 それを上空に飛ばすと、ラビリーズの1体が大ジャンプして、バレーアタックをする。


 猛スピードで月のボールがウンディーネに迫る。


 えれなちゃんは、周りに浮かぶ水精霊を片手に乗せ――。


「 ウォーターバリア―― ! 」


 水精霊は変化し、ウンディーネの周りに『球体の結界』が創り出された。

 

「ウォーターバリアーは、あらゆる攻撃を吸収する!」


 月のボールが、ウォーターバリアーに直撃すると、水の中に取り込まれていく。


「月姫かぐや! いっくよぉーっ!」


 わたしたちは一緒にラビリーズを両手に持ち、上空にえーいと飛ばした。


「魔法カード! 『月の光ムーンフラッシュ』!」


 ラビリーズは光の粒子になり、満月に変わった。


「『月の光ムーンフラッシュ』は、月姫かぐやのレベルを2上昇させて、あらゆる魔法効果を打ち消します!」

 

 満月の光が地上に降りそそぎ、水のバリヤーが消滅した。

 それによって、止められていた月のボールは――パコンっと、ウンディーネの頭に直撃する。


 目を回してウンディーネは、ばたんきゅ〜と倒れ、水の粒子になり、えれなちゃんの周りに戻っていく。


「わたしはターンは終了です」



 ――ステージ上の2人の激闘を実況しているバーチャルアイドル ねこにゃんは嬉々として。


「いいにゃいいにゃ〜♪ いいパフォーマンスにゃ〜♪ アイドルゲージもいい感じに上がっているにゃ〜♪」


 会場に取り付けられたアイドルゲージは、月美 うさぎ【50】 

 水森 えれな【20】の数値を示していた。


 ナンバー1カードアイドル 愛原 さくらは戦いの状況を冷静に分析していた。


「いまは圧倒的に、うさぎちゃんがリードしてるわね。でも、アイドルカードバトルには【あのカード】がある。えれなちゃんが【あのカード】を引けるか……。【勝利の女神】はいったいどちらのアイドルに微笑むのかしらね?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る