第8話 水森 えれな


 対戦相手の水森 えれなちゃんはツインテールなびかせ、中二病っぽいかっこいいポーズをとった。


「えれなのターンよ! 初期手札をドロー!」


 ステージ上に 雨がぽつぽつと降り、雨粒がえれなちゃんの周りに集まり、ぷにぷにした水精霊たちが5体生み出された。

 このマスコットたちが、えれなちゃんの手札の分身になるのだろう。

 雨が止んだステージには、綺麗な虹がかかっていた。

 

「――行くわよ! モンスター召喚。 『ウンディーネ』!」


 ぷにぷにした水精霊の1体が膨らんでいき、女性型モンスターに姿を変えた。


【 ウンディーネ レベル6 属性 水 】


「――ウンディーネ、攻撃! アクアボール!」


 手の中に、『水球』をつくり始めた。

 おそらくアレをわたしにブツけるつもりなのだろう。


 周りにいる子兎たち――通称『ラビリーズ』に笑顔を送った。


「さあ、踊ろう♪ ラビリーズ♪」

 

 手札の分身であり、アイドルカードバトルの相棒 ラビリーズと一緒に、るんるんダンスをステージ上で披露する。


 ウンディーネから放たれた水球アクアボールが、直撃する寸前――ケーキに変わり、子兎がキャッチして、わたしの前に差し出した。

 手の中でケーキは5つに増え、みんなでモグモグ食べる。

 その演出に、会場がわっと湧きたった。


「お――っとにゃ! これがチェンジ魔法――衣装『プリティーラビット』の効果にゃあ! 相手の攻撃をバトル中一度だけ無効化するにゃ!」


 バーチャル空間で実況する ねこにゃんと愛原 さくら。


「……無効にするだけじゃないわ。豪華な衣装で子兎たちと可愛らしいダンスを踊ることによって……見て。【アイドルゲージ】がぐんぐん上昇してる……」


「ホントだにゃ!」


 会場に取り付けられた2つのゲージのうち、月美 うさぎのゲージが『30』の数字を示していた。


「観客を盛りあげることよって上下する【アイドルゲージ】。 歌と踊りでしか上げられない この数値をどう増やすか……。アイドルカードバトルにおいて重要なことよ」


「たしかににゃ。アイドルゲージが高くないと、使えないカードもたくさんありますからにゃ」


「アイドルカードバトルはカードゲームだけじゃない。歌と踊りも合わせてなのよ。良い歌 良い踊りで 観客のみなさんを魅了してほしいわね」


 2人のバーチャルアイドルは期待する瞳で戦いを見守った。

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