第4話 笑顔\(ᵔᗜᵔ)/


 わたしはしばらく、かぐやちゃんのモデルになり――


  パシャ。 パシャ。 パシャ。 パシャ。


 色んな角度から写真を撮られまくった。

 せわしなく動いていた指がピタリと止まり。


「まだまだ表情が硬いよ。ほらリラックスリラックス」


「そ、そんなこと言ったってぇ……」

 

 どうしても かぐやちゃんが望む笑顔とポーズがつくれない。

 なんでこんな事をしているのか、あかちゃんが説明してくれた。


「アイドルカードバトルのステージに立つと緊張して、動きと思考が鈍って本来の力を出せないのよ。それを克服するための特訓よ」


「カメラの前に立つと人は、どこか力が入って不自然になる……」


「こんな風に」と――かぐやちゃんがまた両方のほっぺをかるく引っ張ってきた。


「カメラ前で緊張せず、自然体で完璧なモデルをこなせれば、あなたはステージで――」


「輝けますか? 誰かの『光』になれますか?」


 あのとき、わたしに光をあたえてくれた【愛原 さくら】ちゃんのように――。


「………ええ」


 そしてかぐやちゃんは小さく囁いた。


「もう……あなたは―――」


「? でも、なんでモデルのかぐやちゃんが、カメラマンを?」


 わたしの質問に、あかねちゃんが答えてくれた。


「かぐやは元々カメラマン志望だったのよ。今は『色々あって』モデルをやっているけどね」


「あなたの好きなポーズをしてみて。一番 自然体になれる……。そしてとっびきりの笑顔をつくれるポーズを……」

 

 ――それから2時間ほど、かぐやちゃんにモデルのいろはを習いながら、カメラで撮られ続けた。


「……やっぱり、どうもギコチなさが取れないわね……」

 

 椅子に座るあかねちゃんが眉をひそめた。

 カメラをバックに仕舞い。


「そろそろ終わりにしませんか、あかねさん? 彼女も初めてのことで疲れているようですし……」


 ふらふらの身体を頑張って奮い立たせる。


「だ、大丈夫だよ……かぐやちゃん……。まだまだできる………あっ!」


 よろめいたわたしの身体を、かぐやちゃんが支えてくれた。


「しばらくは ここで泊まり込みで練習をするんだから、あまり無理しないほうがいい……」


「そうね。一度休んでリフレッシュした状態でやったほうが効率がいいかもね。でも、かぐや。あんたまで泊まり込みで練習に付き合う必要はないのよ?」


「そ、そうだよ、かぐやちゃん。モデルの仕事とか大変なんじゃない?」


 真剣な顔つきで、肩で支えるわたしの瞳をのぞき込んだ。


「やるからには本気でやりたい。わたしはあなたを、たくさんの人達に 光をあたえられる カードアイドルにしたい……」


 憧れていた かぐやちゃんに言われて感動で心が熱くなった。


 それからわたしは練習を諦め、汗を流すため、お風呂場へと向かった。

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