第一章 永夜永冬III
★★★
どうしたの…? 火が、すごく大きい…
床も、椅子も、机も、天井も、どこもかしこも、炎だ…
火は私を食べようとしてるの? 私の家を飲み込もうとしてるの…?
やめて…そんなこと…火様…「。
なぜか、小墨染には理由のわからない恐怖が襲い、声まで震えていた。
彼女は震える、赤く火照った小さな手を一つ、花を撫でるように炎へと伸ばした。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
生まれて初めての痛みだった。心臓を抉られるような、千本の鋼針が一度に脳髄を貫くような痛みが、小墨染の神経の中で炸裂した。
彼女は手を引っ込め、ひざまずいた。しかし、天をも焦がすこの炎は少しも止まる気配を見せず、あらゆるものを貪り尽くさんと、部屋の隅々までじわじわと染み入っていった。
息が、息ができない。大きく息を吸い込んでも、喉がぎゅっと締め付けられているように感じる。
見…見えない…
あたたかい…あたたかい…暖かくてすごく気持ち悪い、吐き気がする…
私、もしかして…死んじゃうのかな…
本をちゃんと読まなかったからかな…?
それとも、私がいい子じゃなくて、いつも外のことを考えちゃって…ママを悲しませたから、罰を受けてるのかな…
私、もう…パパとママに会えなくなっちゃうのかな…
うう…もう一度パパとママに会いたい…毎年食べてるケーキを、パパとママともう一度一緒に食べたい…
ケーキ…
「よし…今日は、染染の、誕生日、私たち、楽しまなければ」
突然、父の声が頭の中で響いた。
う…う…そ…そうだ…今日…誕生日だ…私が…死ぬわけない…
小墨染は一生懸命目をこすり、にじみ出た涙をぬぐった。
今日は誕生日だ。一年で一番嬉しくて楽しい日なんだ。死んじゃうなんて悲しくて怖いことが起こるはずがない…
絶対に死なない!
彼女は必死で体を起こそうとした。転び、また床を押してゆっくり起き上がり、転び、それを繰り返した。
ついに、立ち上がった。
花…お花、今日は…お花の誕生日じゃない。お花はそんなに幸運じゃない…パパがくれたお花を…死なせちゃいけない…
小墨染は息を切らせ、よろよろと部屋の奥深くへと歩みを進めた。
★★★
「あそこの辺り、なんだかすごく明るいな…?」
「火事か…? 村の隅の即墨家の家が燃えてるんじゃないか?」
村の隅に近い近所の人々が最初に火事に気づき、騒ぎ始めた。
「あの家、誰もいないのか? あの夫婦、二人とも出かけてるみたいだ」
「あんなに燃えてるなんて怖いな…村で火事が起きるなんて久しぶりだ、不吉すぎる…」
「まるで神罰みたいだ、縁起が悪い…」
「見るな見るな、子供がこんなものを見たら不浄なものが憑いちゃうぞ…」
「そんなこと言ってる場合か、まず村役場に通報して消火の手配をしろよ!?…」
★★★
ほどなくして、火災の情報は村の隅から村の中心部へと伝わり、家の前には次々と村民の列ができ、多くの人々が遠くに立ったまま、嘆息を漏らし、平伏して祈っていた。
村外の町にいる即墨夫婦は、このことをまだ何も知らない。
「お前ら頭おかしいのか! こんな時に平伏してる場合か! 縁起が悪かろうがなんだろうが、消火が先だろ!」
無関心な群衆の中から、一人の若者が立ち上がった。そして一人、また一人と続いたが、誰一人として実際に前進しようとはしなかった。彼らの足は雪原に釘付けにされたかのように、さらに一歩を踏み出すのが難しかった。
即墨夫婦がこの村に引っ越してから、もうずいぶん長い年月が経っていた。普段、妻は人当たりが良く、あまり外出はしないが人望は厚く、夫は働き者で、村の食料調達に大きく貢献していた。
村人たちは新しく引っ越してきた二人をとても気に入っていた。だが、いざ自分たちに影響を及ぼしかねない瀬戸際になると、飛び出して助けようとする者が、かえって異端者のようになってしまうのだった。
ついに、一人の若者が燃え盛る炎へと歩みを進めた。すると彼の後ろにいた数人も動き出し、見物していた多くの村人たちまでもがじっとしていられなくなったように見え、平伏さえもより熱心に行っているようにさえ思えた。
「水を準備する!」
「俺は皮袋とバケツを取ってくる!」
「何もないといいけどな、即墨夫婦はいい人たちだったのに…」
「あの人たち出かけてたみたいだ…大丈夫大丈夫…」
「ああ、良かった良かった…」
絶え間ない噂話の間、一声の悲鳴が、このざわめきを破った。
「ま…魔女ああああああああああああああああああああああ!」
見渡す限り、その光景は、中世の油絵のようだった。
灰色の空の下、崩れ落ちた家屋が瓦礫を築き、白く輝くまばゆい炎があらゆるものを貪り、
燃え盛る烈火の中から、鈴蘭の鉢を抱えた幼い幼女がよろめきながら入り口に現れた。
「鈴蘭の花…死なずにいてくれて、よかった…」
凛冽な疾風が彼女の頬を優しくなで、天使のように真っ白な体毛で覆われていた顔の一部をかき上げた。闇夜の中で、彼女の赤い瞳はすべての罪深き炎を凌駕するほどにきらめいていた。
炎に焼かれた魔女。人々は彼女をそう呼んだ。
『誰もが誠実に救済を求めている』
『敬虔なる神、たゆまぬ努力を続ける人々、それが偉大なこの世界を創り上げた』
『ただ一つの存在だけが、「神」と「世界」の敵である』
『それこそが、魔女である』
『伝えられるところによれば、魔女を生贄に捧げれば、人々は救済のすべてを得るという』
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魔女の瞳は、ついに衆目の下に晒された。
この「災厄」がもたらす血塗れの結末は――次話にて。
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