第一章 永夜永冬Ⅰ

**『誰もが愚かにも光明を渇望している』**


**『忌まわしい神、忌まわしい人々、それが忌まわしいこの世界を創り上げた』**



全てが焼き尽くされた。


私が八歳の誕生日だった日のことだろう。


目の届く限りが燃え盛る炎で塗りつぶされ、周囲には嘆息を漏らす人々が群がり、助けようと進み出ようとする親切な人も少なくなかった。


火事の原因はもう覚えていない。ただ、その光景が油絵のように、濃厚で色彩豊かだったことだけは知っている。


崩れ落ちた家屋の瓦礫、白く輝くまばゆい炎。


そして、花を抱えた幼き、炎に焼かれた魔女が、悪魔のように見せた、赤い瞳。


「鈴蘭の花…死なずにいてくれて、よかった…」


★★★


「火、あたたかい、好き。」


これは即墨染の、幼く寡黙な口から出る、数少ない、最もよく口にする言葉だった。


記憶の中では、この冷たく、嫌いな、「雪」と名付けられた白い物質が、眼前から消えたことは一度もなかった。


宙に舞い、大地を覆い、目の前には常に広大な死の白が広がり、刺すような寒さで世界全体を包み込んでいた。


即墨染は外出が好きではなかった。母も外出を許さなかった。毎日、嫌いな読書以外で一番好きなことは、暖炉の火の窓辺にうつ伏せになり、果てしないこの白い世界をぼんやりと眺めることだった。


透明な赤い炎の光が、幼女の真っ白な体毛に、幼女のゆらゆら揺れる尻尾に、幼女のきらきら光る金色の瞳に映り、部屋全体をあんなにも暖かく照らしていた。


ただ、その、あらゆるものを金色に染め上げそうな目の傍らには、同じ金色の瞳はなかった――


生き生きとした気配のない包帯が、もう片方の半面を巻いていた。包帯の下に傷一つなかったにもかかわらず。


突然、頭の上に馴染みのある感覚が訪れた。これもまた、とても暖かい。火よりも暖かい。


即墨染は頭も上げずに、これがきっとママの手だとわかった。


「染染、どうしていつも窓の外ばかり見つめてるの? もしかして…外で遊びたい?」


母親は幼女をそっと撫でながら、探るように尋ねた。


彼女の目には、あふれんばかりの愛情の他に、何か別のものが混ざっているようだった。


即墨染は首を横に振った。彼女は外の世界を求めてはいないようだった。


暖かい小屋、暖かい火、暖かい食べ物、暖かい家族、それが彼女の世界の全てだった。


それ以上を望まず、ただこれだけで、もう十分に満足していた。ただ、ただ…


「うそ、染染の尻尾、いつもより速く揺れてるわよ」


「ママ、嫌い…」


口ではそう言っても、即墨染はママのことを少しも嫌いではなかった。


もっと小さい頃、即墨染はママに聞いた。どうしてママと自分は、外の世界と同じように白いのか、と。


「あらまあ、私たちは白狐種の『獣人(じゅうじん)』なのよ。体毛が白いのは当たり前でしょう」


「でも、白は嫌い…」


外の白は冷たい。嫌い。


「でも、ママは好き」


ママの白は、暖かい。好き。


「染染、ママと約束したよね、一人で外に走り出しちゃダメよ…」


今に戻って、ママはまた小言を言い始めた。


物心ついてから、ママはいつも外出を禁じることを繰り返し言い聞かせていた。


そんなことを言う時、ママはいつもとても変わった雰囲気になる。少しママらしくなくなり、独特の匂いを漂わせるのだった。


即墨染は、なぜ自分が外に出てはいけないのか理解できなかった。でも、もし外に出ることがママを悲しませるなら、自分は一生外に出ないと心に決めていた。


「違うよ、ママ。外に出たくないんだ」


即墨染は唇を結んだ。「ただ…今日、本で読んだんだけど…昔の世界は、地面が白くなかったんだって。土の黄色だったんだって。空は黒くなかったんだって。空は青くなるんだって…」


「それに、ずっと、あたたかかったんだって」


窓の外を見渡せば、ただ真っ白な雪原か、一面の暗闇しかない。世界は黒と白以外に、かつてはあんなにも色とりどりだったというのだろうか?


「ばかね、それは…!」


母親の少し慌てた声が、墨染の思いを遮った。


「…おとぎ話よ、そんなこと信じちゃダメ」


「パパの書庫の本をこっそり見たのね…ママの言うことを聞いて…次からそんな本は見ないようにしようね」


「うん…」


おとぎ話…?



おとぎ話でもいいや。そんな世界が、ただ自分の心の中に存在するだけでも、考えるだけでとても素敵だ。


自分は、今あるこれだけで…もう十分なんだ。


そう思うと、即墨染は頭の上にあるママの手をしっかり握った。


「ねんね、する…」


「いい子ね、本当にお利口さん」


母親は墨染の頭を撫でながら、指を娘の後頭部で探り、少し躊躇してから、巧みに包帯の結び目を軽くほぐした。


彼女は、結び目を解く過程で、包帯の下のもう片方の目を隠している側頭部の長い髪を、一本たりとも乱さないよう細心の注意を払った。


「ふう…、さあ、ママが寝室まで連れて行ってあげる」


ママに手を引かれて、小墨染は小また歩きで寝室へと向かった。気持ちよく眠れば、こんなごちゃごちゃしたことを考えずに済むだろう。


でも…本に書いてあった、大きな火の玉みたいで、世界全体を照らす「太陽」ってものは、「天火てんか」に似てないかな…?


まあ…そんなわけないか…天火は世界を照らせないし…


それに…どう考えたって、火なんて暖炉の中のほんのちょっとしたものに決まってるし。


★★★


***現在公開可能な情報***


*1. この世界には、『人類種』以外の『人類』の種族、『半獣人(はんじゅうじん)』が存在する。*


*2. 世界は、かつては違っていたかもしれない。*


★★★



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