漆黒の殺戮機
「あの、ですがやはり適切な塩分摂取は健康の基本です。」
機猟師の口元から東京海城名物『鯖とば』が転げ落ちる。
「@:llp居たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
普段感情を余り出さないリョウマは自分も驚く程の大声で侍達に異変を告げた。
リョウマの大声に撤収しようとしていた侍達も驚き即座に銃を取り上げる。
『脅威を確認』
「何?!」
空中から発せられた聞き慣れぬ音声に大尉が驚くと、空間から溶け出すように
一体の漆黒の物体が現れた。
タカギが最も早く反応し、間髪入れず突然現れた謎の物体に轟雷を向けると
その刹那、タカギの腕は波影の右腕と轟雷ごと空中に吹き飛ばされていた。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」、タカギが痛みの声を上げる。
「脅威一を排除。殲滅。」
呆気に取られている猟師の身体を押しのけ、少女が下の侍達ではなく、物体の方に声を投げる
「デビーさんやめて下さい!」
「コマンドの訂正を確認。条件付き承認。」
タカギの腕を吹き飛ばした漆黒の物体は、良く見ると人型をした機械のようであった。
「痕跡抹消を優先」
漆黒の人型機械はそう短く音声を発すると、大尉とシマダにそれぞれ手を向ける。
「記録機器の放棄を要求」
「5.4.3…」
「な、何言ってんだコイツ?!」
シマダが本能的に下手に動くと危険な事を察し狼狽している。
「頭殻捨てて!早く!」
リョウマは我に返り自分の銃を取り上げると漆黒の機械に即座に銃を放つ。
信じられぬ速度で上体を曲げその弾を避け、再び信じられぬ速度で元の状態に戻すと、その隙に大尉とシマダがリョウマの言葉通り放り投げていた二人の波影の頭殻が一瞬にして同時に爆ぜ飛んだ。
『なんだアイツ』早撃ちだったとはいえ、確実に捉えたと思った一発を躱され機猟師も驚く。
漆黒の殺戮機は腕が吹き飛んだタカギの身体を取り敢えず遮蔽の中に引きずっている侍達を完全に無視し、ゆっくりとリョウマが居る小さな建物に向き直る。
先程と同じく殺戮機が両手を建物の方にむけると、おもむろに建物の屋上から
小さな球が落ちてきた。機械は片腕を投げられたカプセルに向けると
「シュ」と微かな音を出しカプセルに衝撃棍を叩き付ける。
小さな球は影波の頭殻と同じように爆ぜるように消えたが、同時に周囲に薄い霧のようなガスを発生させた。「わわわ目が」
「環境妨害を確認」
漆黒の機械は少し首を傾げるような仕草をすると頭部で光る赤い点を数回点滅させた。
「大尉!タカギさん連れて逃げて!!」
何処から解らぬ機猟師の言葉に続いて、ポムポムと音が鳴り、先程と同じような霧が侍達の周りにも立ち込める。
「リョウマ君!それは!」
「いいからさっさと!!」
大尉は隊員達の顔を見る
「隊長、このままだとタカギ危ないです!」
「…わかった。」
「撤退!」
その言葉を待って居たかのように、更に複数のポムポム音がなり周囲は一瞬霧に覆われたようになった。
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『妨害玉は売切れ、弾はあってもアレに当るのか?』
そんな事を考えながら骨電鎧の出力を最大に切替えてリョウマは藪の中を走り
身近にあった大型の建物に入り込む。
あの漆黒の殺戮機を見てから、彼の本能は最大級の警報をずっと鳴らし続けている。『この間の悪寒はアレか。』先日、あの少女を見た時の悪寒を思い出し、
彼は己の本能に従うしかない事を覚悟していた。
『ヤバイぐらいに静かな機械だ、激しく動けばそれなりに音は出そうだが。
出た時と同じような消音で動かれたら先ず解らない。』
建物の中で外套から付けれるだけの弾体を取り出し骨電鎧に取付ながらAは心で考える。 今この瞬間でもアレが目の前に出て来ても不思議ではない。そんな不安もよぎるが、己の本能が今はそうではないと言っている以上、それも無いと若くとも
場数を踏んで来た機猟師は勝手に決めつけている。
フト部屋の片隅を見ると、壁に靠れるように白骨化した遺体があった。
『俺もああなっちまうんだろうか。』そう考えながらも、
彼の口にはうっすらと笑いが浮かんでいた。
そんな猟師の心配とは裏腹に、漆黒の殺戮機は隠蔽機能を使うでもなく、
ゆっくりと事業跡地の建物内を歩いていた。
「目標の脅威度を訂正」誰が聞いているでも無い音声を発する
その刹那、廊下を歩く殺戮機に三式クロスジの弾体が放たれる
「キン」と短い音がなると殺戮機は胸に搭載した高速物体防御機能に付いたレーザーで容易く弾体を消し飛ばした。『あんなモンありかよ…』
恐らく誘いに乗ってしまった事を後悔しつつ、機猟師はこうも考える
「いいよ、お前がそのつもりならやってやる」
殺戮機は引き続きゆっくりと、『いつでも狩れる』というような
余裕も感じられる歩みを続けると、ある部屋の前で歩みを止めた。
「…」今度は何の音声も出さず、静かに両腕を壁に向けると壁に向かって
両手の衝撃棍を貫通モードで射出する。
完璧にハーモニクスされた『シュン』という二つの音が消えると殺戮機は壁をレーザーで焼き切り出しそのまま部屋に入る。
壁には綺麗に平行に穴が貫かれた外套と、それに包まれた骨電鎧が壁に突き刺さっていた。
「目標の排除を完了」
殺戮機は頭部の赤点を少し楽し気に点滅させると、部屋を出ようと振り返った
が、殺戮者が振り返った刹那『排除じゃねーよ』と言う機猟師の声と同時に
『ドン!』という音と青白い光が起こり、殺戮者は動きを止めた。
部屋にはボロボロになった服を着た猟師と、倒れ込んだ殺戮機が転がっていた。
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機猟師は定期駆動にセットした自分の骨電鎧を壁に立てかけ、己は生身のまま銃に巻いていた電探避けの有機ネットを被り、最大現に充填した獲物を〆る為の、雷撃端子一つを握り部屋の中で隠れていたのである。
最大充填されほぼ爆弾に近い雷撃端子は殺戮機に突き刺した瞬間に放電し機械の動きを止めたが、放電の衝撃でリョウマの服もボロボロになってしまったのである。
「……」リョウマが目を覚ますと、赤い点滅が自分の顔を覗いていた。
「過去に似たデータがある。が、違う。」殺戮者は機猟師の眼前で音声を発する
「なんだよ、お前まだ動けるのか。さっさと殺れよ。」
「死ぬ事の意味とは」殺戮者は猟師に問うでもなく更に音声を発する。
「知らねぇよ。お前機械だろ。」
そう悪態を言いながらリョウマは何とか己の身体を動かそうとするが、
電撃で狂った己の神経は未だ彼の言う事を聞きそうにもなかった。
『まぁ、負けは負けだ。仕方ない。』
まだ思考自体も半ば朦朧としている、彼は達観した気持ちになった。
「死ぬ事とは生命体がその活動を止める事です!命は大事なんです!」
「…は?」
達観した筈のリョウマの心に、また場違いな言葉が届けられていた。
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