青巻紙
君が吐いた白い息。
口に含んで、吐息にする。
暖かいのに、温めたい。
満たされてるのに、満たしたい。
教室の隅、寝ている私。と笑う君。
うつ伏せで寝ている僕には、映らない。
心の手前で葛藤してる今。
先生が来る予兆。
涎を垂らした机を袖で拭き、前を向く。
その笑顔は愛想笑いだった。
悔しかった。でも、美しかった。
物語中盤での親しみのような寂しさで。
時計の長い針が3周しても、先生は一度もこない。
自習の時間と悟った皆は、
自席から次々と移動していく。
私は開いた数学の教科書を閉じ、
机にしまい、本を出す。
ありきたりな恋愛小説。
読むのをすぐにやめ、イヤホンをつける。
ピアノのメロディだけが優しく遠く流れている。
歌詞はいらない。その分、爆ぜるから。
目線は外さないで、時間を待つ。
机の上にひとつの小説。
ひび割れた手と白い上履き。
折り畳まれた黄緑色の大きなカーテン。
屏風も仕切りもないのに、
31人の小さな教室に独りの空間。
左耳からは早口言葉を言い合ってる君の声。
同じところで何度も君は噛む。
見栄を張りたい私は心の中で声に出す。
「青巻紙赤巻紙黄巻紙」
「青巻紙赤巻紙黄巻紙」
三度目の青巻紙が言えない。
「青巻紙赤巻紙黄巻紙」
「青巻紙赤巻紙黄巻紙」
また三度目の青巻紙が言えない。
昨夜に読んだ、
限りなく透明に近いブルーをふと思い出した。
心はブルース。
これ以上は赤信号。
イヤホンを外し、うつ伏せになる。
心がする。安堵する。
でも、少しだけ憂いに酔う。
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