背高泡立草

木村玄

教室

スクールバスから降りて、

近くの自販機でお茶を買う。


靴を脱ぎ、自分の薄汚れた靴箱に靴をいれ、

猫背の体で前を向く。


他クラスの教室の前を通ると、

課題や小テスト、愚痴から恋愛話の

喋り声が聞こえてくる。


少し歩くと沈黙になり、

事務室の前を通り、

名前の分からない教諭に会う。


言葉は出さず、頭を少し傾け挨拶をする。

紅赤色の地面が目に入る。


そしてようやく教室にたどり着く。

少し隔離されている。

だけど、それが心安らぐ。気がする。


扉を開けると皆がいる。君がいる。

ゴミ箱から少しごみが溢れている。


目線を上げて、すぐ下げる。

見ているつもりはなく、見えてるだけ。


鞄を地面に置き、教室を出てお手洗いに行く。

手を洗い、髪を整え、教室に戻る。


扉をスライドすると、ホームルームが始まっている。

席につき、話を聞く。


ただそれだけの朝。眠い朝。

でも嫌いではない。

むしろそれぐらいが私にはいいと思う。


いつか離れることを考えたら、

胸が苦しくなって。


言葉にしなかった。

いや、できなかった。

しようとすらしてなかったのかもしれないのか。

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