第4話 勇者
午前七時。
店内に、場違いな金属音が響いた。
全身を白銀の鎧で固め、背中に伝説の聖剣を背負った青年。
「ようやく見つけたぞ、魔王! そして……主よ、なぜこのような場所に」
店内の客が、一斉に彼を見る。
灰色のコートの紳士は、ほかほかのバゲットを片手に溜息をついた。
「勇者よ。手を消毒して剣を収めなさい」
黒革の男は、両手にメロンパンを持ったまま、静かに軽蔑の目を向けている。
「貴様、この娘を人質にしているのか! 今助けてやるぞ!」
勇者が聖剣に手をかけた。
切っ先がわずかに鞘から覗き、鋭い光が走る。
「お客さま」
私は、『店内武器持ち込み禁止』の貼り紙を指差した。
「あ、あの……私は世界を救うために……」
「お決まりでなければ、外でお待ちください。次の方、どうぞ」
勇者は、神と魔王に手を引かれ、列の最後尾へと向かった。
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