第3話 ポムさん イン ファミレス
「なんか、よう? おねえちゃんたち」
3人で団子のように身を丸めていると、幼児はそう言って目の前まで迫ってきた。
「もしかちて、さっきのみてた?」
「「「……」」」 バレていたようだ。気まずい沈黙の時間が流れる。
「……なんか言えよ三倉!」
「いやいやなんで!! ここは吉田きくこがいきなさんな! いやまて、ここは五十嵐さん、あなたしかいないか」
「え、え〜!?」
醜い擦り付け合いを横目に、幼児は「まあ、ちかたないか」となにかを決めたようである。
「よっこらせ」
そう言うと、幼児の体はみるみるうちにドロドロと変な物質になり、人ではないのが明らかだった。そして溶けたドロドロが今度は形を成して、人型に戻っていく。今度は幼児のような容姿ではなく、私たちと似たような女子高生の姿に変化した。
「こっちのが違和感ないヨネ?」
「ば、バケモンかよ……」と呟くと宇宙人? はすかさず「違うヨ」と返した。
「もう仕方ないから教えたげるケド、あたし、別の宇宙からきたノ。つまり宇宙人ってコト」
ニコッと笑顔でそう主張する宇宙人を見ても、なにか現実のように思えなかった。これは三倉の夢の中ではないのかと。信じられない出来事が今現実に起こっているということを理解できようにもなかった。
「で、なぜにファミレスなんですか、五十嵐さん」
三倉はジュースをズーッと飲みながら質問した。
「親睦を深めるならここかなって、えへへ」
何気に五十嵐さくなという女はタフなのか。宇宙人が急に喋りかけてきても物怖じせず「じゃあ、レストランにでもいきますか?」なんてセリフを吐けるのは相当な精神の持ち主だと思う。私と三倉はそれを聞いて口を開けたままになっていた。それに対する宇宙人側も「いいヨン。色々教えたゲル」と何かとフッ軽であった。
ファミレスについても店員は特に違和感なく接してきたので、宇宙人の擬態は成功しているようだ。公園ではボロが出まくりだったが。
「じゃあ単刀直入にききますけど」
三倉が飲んでるコップを置いて最初に問いかけた。
「あなた方の目的はなんなんですか? 地球の侵略? 人間に変わってこの地で種を繁栄させようとしている?」
大体私と同じことを思っていた。そもそも目的はなんなのか、なぜ公園にばかり現れるのか、そして人に擬態する理由は何か。
あんなにどうでもよかった宇宙人が本当に目の前に存在しているのだから、色々詳しく聞かせてもらおう。
「目的は……いえなイ。言ったら怒らレル。あと、シュのハンエイとやらには興味が無イ。そんなことをしなくてもあたしたちは存続できるからネ」
さすが宇宙人といったところか。人間と同じ生態をしていると思ってた訳でもないが、宇宙人を増やすことはどうでもいいと聞いて驚いた。そして目的も言えない、とくるか。
「公園によく居たのはなんでなの?」と聞いてみる。
「あれは、言わば本部との通信。あそこじゃないと連絡が取れないノ。本部っていうのは、あたしが所属してる組織のコト」
しかしまた「詳しくは言えなイ」と口を噤んだ。
「私に擬態してたのはなんでなのですか?」
五十嵐の質問に対しては「ちょうど、そこに居たカラ」と端的に答えた。そんなに深い意味は無かったらしい。
「人間にあたしたちが知られると面倒になりやすイ、そう本部が言ってたカラ、人間に成りすましてたノ」
「騙そうとかではないのか」と呟くと、「モチ」と返された。意外と若者に寄せてきてるのか、こいつ。
「でもやっぱ目的を知りたいですよなーこちらとしては。ほいで宇宙人さん、名前とかあるの?」
三倉があまり情報を得られなかったことに不満を言いつつ、少しでもなにか掴めないかと探っているようだ。
「名前……個体を識別するためのものをそう言うナラ、あたしはポムチョス・ピルリャノ・ゴリゴリアーノって付けられてるワネ」
「名前ゴツくないすか」
「あたしにとっては普通すぎてつまらないワネ。あなたたちの国でいう花子と太郎みたなものヨ」
意外と日本の知識はあるらしい。このポムチョス……ゴリゴリアーノ……どれもしっくりこないが、宇宙人の地球での活動範囲は日本以外でもあるのだろうか。それをそのまま宇宙人に聞いてみた。
「まあ、そうネ。他にも何ヶ所か派遣されてるワネ」
ということは、宇宙人の目的は地球の広範囲に渡って行われようとしている何かなのだろうか。
五十嵐は5杯目ぐらいのソフトドリンクを持って帰ってきて、ぐびぐびと飲み始めた。
「あたしからは色々教えたワヨ。そっちもジコショウカイとやらをするのが礼儀でショ」
何気にこの宇宙人、ちゃんとしている。
すると「では、私から」と持ってたソフトドリンクを飲み終えた五十嵐が先頭を切った。
「人間って、色々なシュルイがあるのネ」
3人の自己紹介を聞き終えた宇宙人は深く考え込んでいた。
「ポムさんたちはみんな一緒な感じ?」
三倉はいつの間にか宇宙人にあだ名をつけていた。まあ、元が長いためそれはそれでアリだが。
「セイカクとか、人間みたいに色々ある訳じゃないワネ。別にこれといった特徴がそれぞれある訳でも無いシ。ただ……」
ポムさ──宇宙人はそう言いったあと少し間をけた。
「人間に成りすますようになってからは、チガイってやつが現れてきてるのかもネ」
宇宙から来た ルバン @Runba__rnnn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。宇宙から来たの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます