第2話 突撃、見つけ隊!

「宇宙人が擬態できるってことは、今目の前にいる吉田きくこも偽物かもってことかね」


 三倉はそこらへんに落ちてる枝を拾い、アリの巣と思われる穴をつんつんつつきながらそう言った。


「いや私は本物だわな。今まで一緒にいたろ」

「でも、もし本当に宇宙人を見つけるってなると、誰かに擬態してる可能性を考慮して探さなきゃ行けないってことですもんね」


 五十嵐はそう言ってその辺の自販機で買ったコーンスープをずずっと啜っていた。それから「あっ、コーン残っちゃった」と缶をポンポン叩いている。こいつら自由だな。


「お二人はこのまま宇宙人が現れるのを待ち続けるんですか?」

「いや、流石に20時までにでてこなかったら吉田きくこも一旦引き返す予定ですね」

「お前がさそったんだろが」


「ふーん」と五十嵐は呟くと、続けて「私も宇宙人探し、協力してもいいですか」なんてことを言ってきたものだから驚いた。


「自分に擬態した宇宙人に私の知らないところで騒動を起こされてもこまりますし……お二人が探しているなら私もちょうどいいかなって」

 

 というわけで、宇宙人探索メンバーはなぜか増えていた。面倒くさいし、本当にいるともまだ信じてはないが、こうも2人宇宙人目撃情報が増えたとなると、信憑性が増すのも当然のことだ。

 まだ信じてはないけどな。




 あのあと20時まで待っても宇宙人は現れず、三倉と私は五十嵐と連絡を交換した後普通に帰った。

 五十嵐はまだ頭から信用出来るといったわけでもないが、OLも嘘ではなさそうだし、三倉が満足できそうな情報を得るのにも役立ちそうなので一旦協力している。

 それから2日だったか。「宇宙人見つけ隊」という名の3人のグループLINEに、何の会話もなかったメッセージ欄から五十嵐の連絡があった。


「宇宙人みつけたかもです。南公園にて」


 三倉と同時にスマホを確認して少しの間ができる。


「ふむ。おい、いくぞ吉田きくこ」

「え、行動早すぎだろ……」


 

 学校終わりの午後4時頃、三倉と南公園に到着すると五十嵐が出会った時と同じ格好で待っていた。


「今もいる?」三倉が五十嵐に聞くと、コクコクと頷いた。3人は公園の植木に身を隠して、五十嵐が指さす方へ視線を向けた。

 本当にいるのか。宇宙人とやらが。有り得ないし、信じられるわけない。しかし、2人がヤバいやつという可能性は一旦置いておいて、本当に存在するなら少しは気になるものだろう。宇宙人とやらに。

 指差す先に居たのは、公園のジャングルジムで遊ぶ小さな子供だった。おそらく幼稚園児で、まだ幼さがあって少し危なっかしい感じである。


「あれが宇宙人なの?」と聞くと、五十嵐は「間違いないです」と確信を持っているようにみえた。

「ほら、よく見てください。あの髪の毛のあたり、ぐねぐねしてません?」


 うむ。よく目を凝らして見てみると、確かに何となく静電気のように髪の毛がふわふわしているような。しかし別に風が吹いてる訳でもなく、今日は湿っけも多いのでなにか別の理由があるか、若しくはあの髪は自由自在の何かなのか。


「ぐねぐねはしてなくないか」

「吉田きくこ、髪の毛をよく見ろ。あれはどうみても静電気じゃない。ぐねぐね意志を持ってるんだよ、あの部分が」


 しかし本当に確信を持ってあの幼児が宇宙人だと思えたのは、次の瞬間だった。


「え、腕伸びた」


 間違いない。三倉も五十嵐も同じ光景をみて唖然としている。すると三倉は今の衝撃でバランスを崩したのか、「いった!」と尻もちをついていた。


「おい、静かにしろ三倉!」

「だって腕伸びんのは反則だろよ!」

「まってまって、こっちきてます!」

「「は!?」」


 流石に今ので隠れていたのがバレたらしい。幼児は腕をひゅんっと元に戻してトコトコ近づいてくる。ま、まずい。知ってしまったからには宇宙人に消される!!

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