第2話 正直に話せば、案外うまくいく

紗季さき悠斗ゆうとの問題は、ひとまず解決した。


少なくとも、二人の間では。勘違いは解け、視線は正しい相手を映し、言葉にしないままでも関係は静かに前へと進みはじめている。


けれど、残っているものが、まだ一つだけあった。


みやびの“運命かも?”問題。


もっとも、うたには、最初から分かっていた。雅にとってそれは、人生を揺るがすほどの大事件ではない。だって、今回が初めて、というわけではなかったから。


「……私、早合点しやすいところ、あるよね」


そう言って笑う雅の姿を、これまでに何度も見てきた。きちんと話せば、きっと大丈夫。



夜。

二人きりの部屋で。詩は一度、深く息を吸ってから切り出した。


「雅ちゃん、話があるの」


「改まってどうしたの」


「……あの日のこと」


その言葉に、雅は何かを察したような表情になる。


詩は、ゆっくりと、順を追って話し始めた。


カフェテリアで起きた勘違い。


悠斗先輩が“紗季さんにキスされた”と思い込んでいたこと。

実際は事故で、しかも相手は雅ちゃんだったこと。

そして、その誤解はすでに“上書き”されていること。


話し終えると、部屋に短い沈黙が訪れた。


やがて雅は、ぽりぽりと頬を掻く。


「……なーんだ」


「怒らないの?」


「怒るとこ、ある?」


雅は、少し照れたように笑った。


「私が一人で盛り上がって、勝手に運命とか言ってただけでしょ」


「……本当に?」


「本当」


雅は肩をすくめる。一拍置いて、付け足す。


「……まあ、ちょっと恥ずかしいけどさ」


詩は、ようやく胸を撫で下ろすことができた。


(よかった)


やっぱり、正直に話してよかった。

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