15. 裂環の罠

 裂環平原スプリット・リング。そこは、かつての大戦で数百発の戦略魔法が撃ち込まれた跡地だ。大小無数のクレーターが鎖のように連なり、大地は歪に隆起している。ここでは磁場も因果も狂っており、羅針盤はぐるぐると回り続け、風は常に悲鳴のような音を立てている。

 その平原の中央に、数十名の《殻狩人シェルハンター》が潜伏していた。灰色の強化外骨格に身を包んだ精鋭部隊。彼らは巨大な「共鳴増幅装置」を設置し、緊張した面持ちでモニターを監視している。


「……目標三体、予定通り接近中」

「北より『静寂』。東より『反響』。南より『連鎖』」


 指揮官が汗を拭う。狂気の作戦だ。世界を滅ぼしかねない三つの魔王遺物を、偽の情報と微弱な因果誘導でおびき寄せ、一箇所でぶつける。互いの力を干渉させ、共倒れになったところを特製の封印檻で捕獲する──それが彼らの計画だった。


「来るぞ……! 遮断フィールド、最大展開!」


 指揮官の号令とともに、平原の空気がビリビリと震えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る