2. 観測不能の震源
同時刻。灰鏡塔の最上階。観測室はパニックに陥っていた。
「おい、どうなっている! 計器が壊れたぞ!」
「違います、故障じゃない! 針が振り切れてるんです!」
白衣を煤で汚した学者たちが、悲鳴じみた声を上げながら観測機器にしがみついていた。中央に据えられた巨大な水晶球──因果震度計が、不気味な赤色に明滅し、今にも砕け散りそうなほど振動している。
「震源はどこだ!? 『逆巻き』か? それとも『ノマド』か!?」
「い、いえ……波長が違います! これはもっと純粋な……『停止』の波長です!」
「距離、ゼロ! 直下に来ています!」
学者の長が、青ざめた顔で窓の外を見た。曇ったガラスの向こう。灰色の荒野を、一人の巨人がゆっくりと歩いてくるのが見えた。ただ歩いているだけだ。それなのに、空間そのものが彼を恐れ、歪んで避けているかのように見える。
「馬鹿な……。災害そのものが、服を着て歩いているというのか……」
その時だった。轟音と共に、塔の下層が吹き飛んだ。
「──確保しろ! サンプルAクラスだ!」
塔の入り口を爆破し、武装した集団が雪崩れ込んできた。全身を灰色の強化外骨格で覆った兵士たち。《
「ひ、ひぃッ! なんだ貴様らは!」
「退け、学者崩れども。我々は人類の防衛のために、あの災厄を回収する」
隊長らしき男が、無機質な声で告げる。彼らは塔を守るつもりなどない。この塔を崩してでも、グラードを瓦礫の下に埋め、動きを止めるつもりなのだ。学者たちが逃げ惑う中、兵士たちはロケットランチャーを構え、階段を上がってくる巨人へと照準を合わせる。
「目標、第一層を通過。……撃てッ!」
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