生ごみ連続散乱事件1

 とある町の電柱の下、少女は張り込みをしていた。


「きっとホシは出てくるわ、絶対に証拠をつかんでやるんだから。」


 そういってアンパンを齧ると、双眼鏡をのぞき込む。


「あっ!来たわ!決定的瞬間!」


 カラスがゴミ袋を漁る。生ごみが散乱して、少女は左手でベレー帽のツバを持ち上げた。


「やっぱり犯人はカラスだったのね。前科十犯の大悪党。今日こそ捕まえてやるわ!」


 少女はダッと駆け出し、カラスを追い詰める。



「もう逃がさないわ!」

「ちょっと!お嬢ちゃん!」



 少女が振り向くと、そこにはマンションの管理人を務めるおばちゃんがいた。



「カラスをいじめちゃダメじゃない。犯人は203号室の鈴木さんよ。」



 おばちゃんはめくりあげられた動物除けネットを直しながら言った。




 少女はベレー帽を深く被り、アンパンをちぎってカラスに投げた。




 今日のアンパンは、少ししょっぱい味がした。

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