痴話喧嘩仲裁事件

 とある町の河川敷。カップルと思われる男女が口喧嘩をしている。



「これは……事件ね!」



 少女は腕をまくって仲裁に入る。



「あなたこそ!新しい女でもできたんじゃないの!?」



 少女は一瞬たじろいだ。そして左手でベレー帽のツバをグイっと捻ると、声をかけた。



「まぁまぁ、せっかくご縁が合って二人は出会ったのです。そんなに熱くならずに、静かな場所で落ち着いて話されてはいかがでしょうか?」




 少女が発した一言に、女はキッと睨みつける。すると、男の方が口を開いた。




「お嬢ちゃん、驚かせてごめんね。これは劇の練習中なんだ。」



 少女は帽子を深く被ると、複雑な表情で立ち去った。



 明日こそ、事件が起こればいいのに。


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