帰省

 それから少しして、大学生である彼は学生最後の年の冬休みを家で過ごすために田舎にある実家に帰省した。

 すぐには帰ってこないと思ったので、この期間を有効活用すべく私は人生で何度目かのダイエットを試みた。

 彼からは度々応援のメッセージが来るが、言葉自体は素っ気無いし、たまにきつい口調で喝を入れられて何度も挫けそうになった。

 だけどインターネットで知り合っただけの私にこうして親身になって応援してくれているのは、私に少しでも期待してくれているからなんだと何度も自分に言い聞かせて、醜い自分の体に鞭を打ち頑張った。

 一ヶ月経っても彼は帰ってくることなく、不安だけが募っていった。

 正直私は彼にとって都合の良い存在でしかないし、東京にいる間、性欲を満たしてくれるだけの存在としか思われていないのかもしれない。

 でも彼は本当に飴と鞭の使い分けがうまくてどんどんと彼に引き込まれていった。

 おそらく彼はただの気分屋で、それを私が良いように解釈しているのは自分でもよくわかる。

 だけど、彼女でもない私からの、他の女の子と会わないでほしい。という要求に少し戯けながらも了承してくれたり、極め付けには

 今流行りの位置情報共有アプリをどうにか交換できないか頼んだ時は、二つ返事で了承してくれた。

 他の女との関係がないからこそ交換してくれたのだと安心したのも束の間、詰めの甘い彼は私が自分の位置情報を把握していることを知っているのにもかかわらずラブホテルに行くこともあった。

 正直この時点で他の女の存在には薄々気づいていた。

 だが今の私にそれを制限する権利はない。

 だから私は嫉妬で気が狂いそうになりながらもなんとか彼が帰ってくるまでの間を耐え忍んだ。

 心身ともに疲弊した私はなんとか四キロのダイエットに成功した。

 それを彼に報告すると彼から私の弱った心には耐え難い一言が帰ってきた。

「え? たった四キロ?」

 元々あまり素直に褒めることが得意ではない彼だったけど、流石に今回は褒めてくれるのではないかと淡い期待をしていた私のメンタルはズタズタにされた。

 彼は本当にマイペースな人間で、私との約束を忘れることはざらだったしそれに何度も振り回された。

 彼の自由な生き様が好きだったけれど、自分の存在が彼にとっては約束を忘れてしまうほどそんなちっぽけな存在だったことにひたすら悲しくなった。

 弱り切った私の体に四キロの脂肪が戻ってくるのは早かった。

 そうゆう時に限って明日帰るよ。などと抜かしやがるから困ったものだ。

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