第2話
田舎の比較的栄えている主要駅のすぐ近く、地元の食材を使った料理を扱う老舗料亭。
まさか、こんな立派な場所での会合だなんて思っていなかった。そして……
「しゃ、社長…これ経費とんでもないことになるんじゃ……」
「だぁいじょうぶ!上手くいく!
なんたって久住ちゃん、キミにかかってるからな!!」
「は!?
いやいや、何も聞いてないのに!?」
「何も知らないからこそだよ!」
広間には豪勢な料理が並んでいて、見ただけで数万はするとわかるようなものがずらり…
そして、今回の会合相手が現れると、社長を始め役職付きの社員が身構えた。
現れたのは年配の男性と、40代くらいの男性たち。そして一際目を引く顔立ちの整った男性が、気まずそうにしている。
はて、どこかで見たような。
「く、久住ちゃん…ほらほらお隣に!」
社長に促されるまま、一番年配の男性の隣に座らせられてお酌をする。
あー…私にかかっているって、そういうことねぇ…と察した。要はキャバ嬢の用に相手のご機嫌取りをして、コンパニオンのように接待しろと言うのだ。
大手の取引先にもなり得るのだから、これが決まれば待遇も会社としても良くなる。
その為に自分を犠牲にするのはしんどいな、と思いつつも、これも仕事だと割り切ってお偉いさんのご機嫌を取る。
みんな酒も進み、料理も半分ほど食べたところで、話の内容をようやく理解した。
「まさか、今をときめく俳優の園田さんが目の前にいらっしゃるとは、光栄ですなぁ!
この気持ちをぜひ、私たちの地元の皆さんにも感じてもらいたい!その思い一心でございます」
「あはは、ありがとうございます。
僕としてもたくさんのファンの皆さんと触れ合える機会をいただけるのは、嬉しいことです」
どこかで見た覚えがあると思ったら、俳優さんかぁと納得した。どうりで顔立ちが浮世離れしていると思った。
社長は俳優の園田さんのご機嫌取りに必死。
そんな中、自社の社員が誰もこちらを見ていないことを良いことに、お偉いさん(白木さんと言うらしい)は私の腰に手を回して引き寄せたり、太ももを撫でたり、好き放題だ。
(これも仕事…)
愛想笑いで誤魔化すけれど上手くいかない。
顔がひきつる。
でも、私の対応次第では大口の、それも特大の取引になるんだ。
「がっはっはっ!
いやぁ、キミはなかなか器量がいい!
社長、話していた通り別室があるのかな?」
「は、はい!もちろん…」
「そうかそうか!
いやぁ、私が行きたいところだがねぇ、膝と腰が悪くてな。
園田、もっと楽しみたいだろう?
せっかくだ、この子連れていきなさい」
私を連れていく?
何の話だ。
嫌な予感がした。
「んー、しかしもったいない。
やっぱり私がちと味見したいなぁ」
途端、白木が私の下着の線をなぞり、スカートの中に手を入れた。
あっという間に下着の中をまさぐり、にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
一瞬、何が起きたかわからなかった。
けれど。
私は、無意識のうちに体が動いていて。
白木を、蹴り飛ばした。
家政婦以上、奥様未満。 雨宿 たまこ @1997_harapeko
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