家政婦以上、奥様未満。

雨宿 たまこ

第1話

圧倒的人手不足。

地方では今、若者の県外流出が顕著で、地元に残って地元で働いてくれる若者に飢えている。


特に、高卒の若手。


大卒の子は県外に出てしまうか公務員になってしまうから、高卒で就職を希望する子は喉から手が出るほどに欲しい人材。




だけど。




こーんな肉体労働で残業が多くて土日休みじゃなくて男ばっかの職場に、若者が来るもんか!




ここは、田舎の小さなイベント企画会社。

私はそこで事務処理を担当しているが、休日返上で現場に駆り出されることもある。


それに対して不満は無いが、もう少し人員が増えてくれたらと思うことはしばしば。


さすがに繁忙期に現場に行って、現場で動き回って、帰ったら事務処理というのは体もきつい。




久住くすみちゃん、来週大手との会合があるんだけどさぁ…ほら、おっさんばっかだとアレだろ?


良い食事と酒!

用意するからさぁ、頼む!


デカイ案件なんだ!!」




社長が合掌しながら頭を下げて言う。


そこまでされたら断る気にもならない。


「わかりました。

高級なお酒、期待してますね」


「助かるよぉ!

若い子が久住ちゃんしかいなくてさ、ごめんね!よろしく!」




この時の私は何も知らなかった。


会合相手が誰なのか、どんな立場なのか、それでどんな利益を得られるのか。


そして、この先の私の人生が、どうなるのか───

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