結果:一致
ほしわた
結果:一致
記録開始
同行者三名。
剣士一名、賢者二名。
携行対象一点。外見は卵状。
当該対象は「聖女、あるいは天使の卵」と説明されている。
癒やしの力を持ち、人を救う存在であるとされる。
破損厳禁。温度管理。衝撃回避。
剣士は、自身を「剣の達人として転生した青年」であると認識している。
この自己認識に、同行者から異議は出ていない。
携行物の一つとして、記録用ノート一冊を確認。
初期状態は白紙。
起床後、意識していないにもかかわらず文字が浮かび上がる現象を確認。
剣士はノートの内容を疑うそぶりを見せたが、
「考えないほうがいい」と判断し、思考を中断している。
第一次記録
《本日の出来事:A村にて、けが人一名》
A村到着。
外敵の痕跡なし。
村人一名、腕部欠損状態で発見。
出血はすでに止まっている。
原因不明。
剣士、ノートの記載内容を再確認。
短い沈黙の後、発言。
「……けが人一人なら、俺でいい」
剣士、自身の腕部を切断。
賢者B、回復魔法を行使。
剣士の腕部、完全再生を確認。
その際、携行対象(卵)に微弱な温度上昇を確認。
触診時、脈動のような反応あり。
村人への追加被害なし。
村人より感謝の言葉あり。
夜間、ノートに追記を確認。
《結果:けが人 一名》
数値一致。
第二次記録
《本日の出来事:村の入口付近にて、けが人一名》
賢者A、敵性存在の不可視性を指摘。
賢者B、予言の正確性について疑問を呈する。
村周辺を再調査。
侵入痕跡なし。
剣士、ノートを一瞥後、短く発言。
「また一人、だろ。なら――」
同行者の視界外に移動。
剣士、肩部を切断。
賢者B、回復魔法を行使。
再生を確認。
回復完了と同時に、卵の表面温度が上昇。
表面に細かな振動を確認。
賢者B、異常を報告。
剣士は「気のせいだ」と判断。
夜間、ノートに追記。
《結果:けが人 一名》
数値一致。
剣士、安堵の様子を見せる。
第三次記録
《本日の出来事:村外れにて、けが人一名》
村の存在を再確認。
地図上に記載なし。
周辺記録にも該当情報なし。
村人への聞き取り調査は中断。
回答は要領を得ない。
剣士、ノートを閉じ、しばらく沈黙。
その後、発言。
「……一人分なら、足りてる」
剣士、脚部を切断。
賢者B、回復魔法を実施。
再生を確認。
卵、脈動の間隔が短縮。
触れた際、不快感を覚えるとの報告あり。
村人の反応に変化。
感謝と恐怖が混在。
しかし避難行動は見られない。
夜間、ノートに追記。
《結果:けが人 一名》
誤差なし。
第四次記録
《本日の出来事:村中心部にて、けが人一名》
剣士、ノートの内容を確認後、即断。
「……今日も一人だ。なら、全部俺でいい」
剣士、両脚を切断。
直後、自立不能。
賢者B、蘇生可能時間について言及。
制限時間:十分。
賢者A、状況を「不可視の敵による集団脅威」と判断。
村全体を対象とした殲滅を提案。
剣士、制止を試みる。
「待て。敵は……俺が――」
発言は記録されたが、判断には反映されず。
賢者二名、合意。
広域魔法を行使。
村全域の焼失を確認。
生存反応なし。
状態変化記録
同時刻、卵に明確な亀裂を確認。
外殻の分離。
内部構造、展開。
重量増加。
温度急上昇。
翼状器官の形成を確認。
発声あり。
内容は記録対象外。
最終集計
村人:二十七名
回収数:二十七
条件:充足
状態移行:完了
《結果:一致》
主人公の記録。
抵抗は記録されなかった。
記録終了。
結果:一致 ほしわた @hoshiwata_novel
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