ほしわた氏のホラー三作の中で、これが最も構造的に洗練されている。「教室中央の円形球体」の官僚的恐怖、「河川で見かけた少女」の切ない怪談——この二作とは異なる、冷血な設計の恐怖だ。
異世界転生もの的な語彙——勇者、賢者、回復魔法、聖女の卵——を全て記録体裁で書くことで、読者は最初「ゲームっぽいファンタジーの報告書」として読み始める。ところが回を重ねるごとに、卵の脈動が増し、剣士が自分の手足を切り落とすことを「当然の前提」として実行し続け、賢者二名が無感情に村ごと焼き払い、「村人:二十七名/回収数:二十七」という集計が淡々と出る。
「聖女あるいは天使の卵」という「救済」の名目が、実は供物を集めるための罠だったという構造が、無感情な記録形式によって一切の感情的装飾なしに明かされる——その冷たさが最大の恐怖だ。
「主人公の記録。抵抗は記録されなかった」という最後の一文が、剣士の存在を完全に消去して終わる。完結済み1話・1300字。ほしわた氏の全作品を読んできた上で、この作者がこれを書けることに静かな驚きがある。