第4話
tank22 が沈黙して数週間がたった。
笑美は tank22 のアカウントを見ることはやめなかったけれど、 tank22 の沈黙とともに、怒りを抱えた人々の投稿を見る頻度は減った。
代わりに恋をしているように見える人のつぶやきを探し、その人々の言葉を追うようになっていた。
tank22 があれほど激しくエミを求め続けたこと、そして狂おしい呼びかけとその後の沈黙は、笑美の新しい衝動を支えた。
笑美は時を忘れて画面をスクロールし、人々のつぶやきを集め続けた。
それらは少しずつ、笑美の中の抑圧と怒りに支えられた暗闇の層とは異なった層に言葉を堆積させ始めた。
そしてまた tank22 の不在は、少しだけ笑美の胸を疼かせた。
◇
「いいかげんにして!」
叫び声とともに、部屋に駆け込んで閉じこもってから聞こえなくなっていた笑美の耳に、ガシャンというガラスが割れるような大きな音が飛び込んできた。
同時に、モニターの灯りだけが温かく静かだった世界が、突如として匂いをともなった不快な暗闇となって笑美にのしかかった。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
――ああ、あの人たちか。
笑美の中の消えかけていた核と世界との接続は、まだ完全に失われてはいなかった。
闇の中で、愛をささやき人を求めるつぶやきの
◇
部屋に閉じこもり、エミを呼ぶ tank22 の声を見つけてから十か月が過ぎた。
笑美は引きこもったままだったけれど、家族がいない時間を見計らって歯磨きと下着の洗濯をするようになっていた。遮光カーテンを開ける日もあった。レース越しの日差しが眩しかった。
パジャマで画面を眺めていたある日、笑美は tank22 がまたつぶやき始めていることに気づいた。
tank22@***
月がきれいだな
2025/06/12 22:32
tank22@***
梅雨入りか
恵みの雨の季節だ
2025/06/14 21:46
tank22@***
おやすみなさい
2025/06/14 22:30
tank22@***
セブンの弁当うまいな
2025/06/16 08:08
……
あんなに狂おしいほどの心の声をもらしていたアカウントと同じ人とは思えないほどの穏やかなつぶやきに、笑美はあらためて tank22 に何が起こったのかを考えずにはいられなかった。
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