第3話 イメージ・オリジナリティー

「おじさんさ…なんか地味なイメージない…たいやきとこの店って」

「地味でいいじゃないか、派手にする意味がないじゃないか…」


「最近ハンバーガー屋さんっていうのがあるらしいんだ…」


「ああ、ニュースでやっていたな、銀座にマクドなんとかとかいうのが開店したんだってな…」


 時代はそのころです。

 マクドナルドの記念すべき最初の店舗は銀座でした。


「おじさん、せめて人雇ってさ…若いミニスカートのお姉さんに売られたいんだ…俺…」


「お前なに言っているんだ、こんな単価の安いたいやき、利益はほとんどないし、人を雇う余裕なんてないよ、ほらあんこいれるぞ! 」


「え~やだよ、かっこよく売られたいよ…『One TAIYAKI please』とかカウンターから厨房に声がかけられてさ…そして小綺麗な袋に入れられて売られたいよ! もう家出だ! 」


 イメージの問題だったりね。


*****


「おじさん、あんこさ、どうして市販のものに変えたの…」

 たいやきくんは寂しそうに言いました。


「そりゃあな…手間とかコストとかあるんだよ…」


「俺…おじさんの手作りあんこが好きだった…」


「しょうがないだろ…あんを煮るのだって時間がかかるんだ…大変なんだぞ」


「そうだけどさ…どこに行ってもどこのお店でも同じあんこじゃな…俺…おじさんオリジナルになりたいんだ…」


「ほら、あんこ入れるぞ、おとなしくしろ」


「えーやだやだ、もう家出だ!」


 オリジナリティの問題だったり。

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