第2話素晴らしき善人

「おーい!こっちも手伝ってくれ~!」


「はーい!分かった~!」


 太陽があがってすぐの時間。

おじちゃんに呼ばれて新しい荷物を運ぶ。

『始まりの国 ジェネシス』にまで運んでくれたおじちゃんに「なぁ!俺も恩返ししたい!」と言ったらおじちゃんの荷物運びを手伝うことになった。

近くの木の下では白が本を読んでいる……あの『楽園』ってやつ……面白いのか…?


「おお、お前手際がいいな。こういう仕事向いてんじゃないか?」


おじちゃんは荷物を運びながら褒めてくれる。

いい人だこの人!!!!


「えへへ!おじちゃんがすっごくいい人だからたくさん頑張ろうって思えたからかな~!!」


「言ったな~!この人垂らしめ~!」


 おじちゃんは荷物を運ぶ手を止めてグリグリと撫でてくれた。

こうは言っているがおじちゃんの方が数箱俺よりも運んでいる。

だが俺を遅いと責めることもなく話し相手が出来て楽しそうだ。


「おっとこれで終わりだな。

お前のお陰でいつもより早く終わったよ本当にありがとな!」


 ガハハと効果音がつきそうに笑いながらおじちゃんは荷台に座り。

また隣に座れと催促してきた。


「えーと、はいこれお前の分の飯だ。

不器用だからあんまり美味くないと思うから食べたくないなら俺に返してくれ。

食材を無駄にするなって嫁さんに言われてんだ!」


 隣に座るとおじちゃんは後ろの荷台をゴソゴソとあさり一つの箱を渡して来た。

中を開けると今まで見たことない奴がたくさんだった。


「おじさん、これ飯?なのか?」


中には白い三角形の物が2つと茶色い木の根が切り刻まれて入っていた。


「うっ、そう言われると来るものがあるぜ…

すまんな俺こそ恩返し出来なくて、、」


 そう言っておじちゃんは俺から箱を取ろうとするがそれに気付いて俺はすぐに否定する。


「っいや!違うんだ本当に!まともな飯を最近食べ始めたばっかりでな!

知らなかったんだ!」


 そう言うとおじちゃんは悲しそうにしてた顔を変えて、驚かせようとするいたずらっ子のような顔に変える。


「そうか!そうか!なら一口食べてみろ!

箸使えるか?スプーンもあるぞ!」


初めての気の棒二本の箸を使えずに苦戦しているとおじちゃんがスプーンをくれる。

そして白い三角形の奴を刺して救い口に含む。


「!!…………!おじちゃんこれ凄いぞ!すっごく凄いぞ!」


おじちゃんはまるでいたずらが成功したようにご機嫌になって笑う。


「はは!それはお前『おにぎり』って言うんだよ凄いだろ!!」


 おにぎり……これおにぎりって言うのか!

そうだ今度そこで本を読みつかれて寝ている白に作ってやろ!


「この木の根っこも凄いな!!木の根っこなのに凄いぞ!」


「ははは!なんだそれ!言い方おっかしいなぁ!!!ひー!!」


食べ進めてる間もずっとおじちゃんは笑いながらひーひー言っていた。

そして少しして笑いが収まった頃に俺に顔を向けた。


「飯を食べて安心した時や嬉しい時は『美味しい』って言うんだよ。」


「……おい…しい……」


「そしてそのな木の根っこはきんぴらごぼうって言うんだよ!はは!ひー!はは!!

あーおっかしい!!」


ずっと笑ってる、おじちゃん!!


「おい!!そんなに笑わなくていいだろ!……」


「何恥ずかしがってんだよ!」


「そんなに笑われたら……なんか……恥ずかしいだろ……!」


「良いんだよ!子供は気にせず満腹なるまで食べろ!!

子供に食べさせてやるのは大人の役目なんだからな!」


「む~。」


「それにな、大人でも子供でも次のいつ飯が食えるか分からないからな。

だからな飯を食べる時は笑って食え!!

いいか!?絶対食って食って食いまくれ!!!」


そういって俺とおじさんは雑談しながらご飯を食べた。


そして。

二人とも食べ終わりおじさんの用事を済ました夕方だった。

おじさんと、俺と白で街中を歩いて雑談している時にふと、おじさんが口を開く。


「そういえばお前は何処の国に行きたいんだ?」


 何処の国に行きたいのか、思えばおじさんに対して『楽園』が何処にあるのかを聞いていなかった気がする。


「ああ!その事で聞きたいことあるんだよおじさん!」


「お?なんだ。」


 おじさんは露店を見ながらも答えてくれる。

どうやらおじさんは店に売ってある三色団子に夢中のようだ。

それにつられて白も露店を見て近寄る。

他の人には見えていないのだろうがメニュー表を占領する白を横目に発言する。


「『楽園』って何処にあるんだ?」


……その言葉でおじさんは三色団子に向けていた目をゆらりと此方に向ける。

露店のメニュー表を見ていた白も呆れたような目で此方に顔だけを向けいた。


「楽……園……?」


言葉を反復しながら考え込むように手を顔の近くに寄せた。

そして数秒して合点がいったように、うんっと首を振って。


「ぷははは!!!」


大笑いし始めた。


「…ど…どうしたんだよ?おじさん。」


まるで気が狂ったかのように笑いだした彼に対していう。


「あぁ!はは!!ちょっとタイムだ!!」


そういって呼吸が苦しそうにしながら不意に出てきたであろう涙を拭っていた。


「はは!はぁ……よしOKだ」


そういっておじさんはぴたりと笑いをとめた。


「つまりお前は『楽園』に行きたいって事だな?」


「う…うん!そうだって言ってるぞ!」


おじさんは、もう笑う気配はなく真面目に目を合わせるように言う。


「一言でいうと、俺が知る限り『楽園』という国は存在してない。」


「え……」


…………

信じられなくておじさんから目を反らすと。

白は、じっと此方を見ていた。

じっと…じっと何の感情も感じられない目で。


「『楽園』という国はある書籍の中にある国だ。

だから場所も、存在しているかも分からない。」


白とも目線を合わせてられなくて改めておじさんの顔に目線を合わせる。


「……それって嘘って事か?」


 正直いうと困惑していた

あると思っていた『楽園』がない事より、白が嘘をついているかもしれないという事にだ。

 だけど考えてみれば白と会ったのはつい数日前で『楽園』は会ってからすぐに聞いているいた事で信頼も何もないから別に嘘をつかれても仕方ないのだろうか……

しかしそれを否定したのはおじさんだった。


「いや?あくまで『俺が知る限り』は存在してないというだけだ。

この世界は広い、だから当然俺も知らない事もたくさんあるし、知らないだけで実在するものも数えきれない程ある。

だけどな、それを知ろうとするのが旅人なんだ。」


「……おじさん……」


「お前も旅人なんだろ?

なら分からない事があるなら探せばいいだろ。

人に聞いてばっかりじゃ、知れない事がたくさんあるんだからな。」


そういっておじさんはゆるりと身体を回し。


「だから俺は……!

露店にある団子を食べて冒険しなければならない!!

あんな興味をそそる食べ物があるのに冒険しないないなんて旅人の恥だ!!!

ということで婆さん!!団子を二つくれ!!」


 全速力で団子を売る露店に買いに行っていた。

お婆さんは、はぁーいと言いながらせっせっと準備しておじさんはもじもじと興奮を隠せないように身体を揺らしていた。


「……はぁ、おじさん結局団子食べたかったんだな。」


 そう一人言を呟くが、この距離ではおじさんにさ聞こえないようだ。

だから俺は隣に来ている人物に向けてもう少し『一人言』を続けた。


「なぁ白。」


 白は目線を完全に団子に向けながらこくこくと首を縦に動かして聞いていることを伝えていた。


「『楽園』が何処にあるかは知らないけどさ」


「……」


おじさん。

分からない事の答えを探すのが旅人なんだな。

なら『楽園』という存在が例えなくても、答えは一つだけだ。


「どうせ一番の目的は俺の運命の人を見つける為なんだ、だからついでに。

『楽園』が嘘でも探して見つけてやるよ!!」


そう目を閉じてガッツポーズを決めるが、


「てっ?!おい!白!」


目を開けた時にはおじさんの近くで団子をじっと見つめながら、おじさんの三色団子をツンツンとつついてた。

それおじさんの奴!!

そんなこんなでドギマギしていると、おじさんがこっちに戻ってきて手にもった二つの団子のうち一つをくれる。


「お前も要るだろ?!こんなに美味しそうなんだからな!」


 あわあわとしながら団子をもらう。

真ん丸とした三つの団子は初めて見たのに、何故か美味しそうで何処か懐かしい気分になった。


「?」


 やっぱりこれ……どこかで……?

そうして思い出そうとしていると突然目の前が真っ白くなった。


「っ白……!?」


 その正体は、串の団子の一つを勝手に食べた白の髪の毛だった。

びっくりして声にだしてしまう。


「どうかしたか?」


突然声を出してしまった俺におじさんが反応する。

言い訳!……言い訳どうしよう!!


「えっとあの!いやぁ~次の団子白色だな~って!!」


……流石に無理がある!!


「おう、そうだな。」


おじさんはそういってそれ以上は追求する事もなく団子をまた食べ始める。

っなんとか誤魔化せた??!!

そう安心してあと二つ刺さった団子を食べようとすると。


「うまいなこれ。」


すぽんと手から串が抜け。

突然の事で困惑しながら目を開けると、白に残りの団子二つ刺さった串を奪われていた。


「もう一つ団子買って…」


「しろぉぉぉぉーー!!!!」


おじさんの声を遮り絶叫してしまう。


「お、お前そんなに白好きだっただな、?

もう二つ団子買ってくるからお前にもう一つやるよ、、?」


……おじさんに変な勘違いをされてしまった……

その俺の惨劇を見ながら白はニヤリと笑って団子を食べていた。


──────────────────────


それから時間が過ぎ、お昼から少し太陽が傾いた時間帯。



「ありがとな。お前といて楽しかったぞ。」


おじさんは荷車に座っている。もうそろそろ『始まりの国 ジェネシス』を出るらしい。


「おじさんは次にどこの国に行くの?」


「戻るんだ、嫁さんのいる国にな。お前はどの国に行くんだ。」


俺が次行く国それはもう決まっていた。

楽園の情報をつかむ為!


「俺は『大切のアルカ』に行こうと思ってんだ!

おじさんが歴史書がたくさんあるって言ってただろ?

なら『楽園』の記録が残ってるかもだろ!!」


そう言うとおじさんはにこやかな笑顔で笑った。


「俺の叔母さんがいる国か、確かにあそこの城には沢山の本があるからな!

行ったことあるけどすげぇうまい飯もあるぜ!!」


 『大切の国 アルカ』その国の城には大きな図書館があり一般人も入ることができ童話や歴史書など幅広い本があるため子供にも大人にも大人気だと、おじさんが今日の朝教えてくれたのだ。


「あー、でも国の入り方がな……」


しかしさっきまでにこにこしていた顔を変え突然渋るような顔をした。


「あの国は15歳以下は保護者同伴じゃないと入れないんだよ。」


「……おじさん……手伝ってくれない?」


そんなの俺聞いてない。

絶対大切の国入りたいー!!

だけど現実は非常だ。


「ごめんな。」


「ぐっ……せっかく行きたい国出来たのに……」


大袈裟なぐらい肩を落とすと、おじさんがニヤニヤと笑う。


「どうしてもっていうなら…俺が13だった時に大切の国に一人で入ったという話をしてやらなくもないぜ?」


「!!どうしても!どうしてもだから教えてくれ!!」


 明らかに声を変えてテンションの上がった俺に対しておじさんはにこにこと笑って、秘密だぞと念押ししながら語ってくれた。


「OKだ!!おじさんありがとな!!

これで俺大切の国入れる!!」


「ああ門番にもそうだが、道中も気を付けろよ」


威勢よく返事をし、おじさんにお礼を告げる。

そして何処からかゴーンゴーンと音が響いた。


「これは3時の鐘だな。

俺はもう始まりの国を出る。

本当にありがとな。」


改めて、とおじさんがいう。

俺も同じように改めて感謝を告げ、おじさんに背中を向け白と一緒に『大切の国 アルカ』へ行こうとした。


「まて!!」


 その声に振り返るとおじさんは一つの袋を手にして俺の手の上に乗せた。


「アラン•カーティス」


アラン、カーティス……?


「俺の名前だ。

だから……あー、おじさんは止めてくれなんかむず痒いから。

呼ぶならアランのおっちゃんって呼んでくれ。」


「いや!あのこの袋!!」


それよりもと袋を片手で持ちもう一つの手で指を指す。

ずっしりとして重く振るとカチャカチャなる、間違いない、硬貨だ!

だけどそれを言ってもおじさ…アランのおっちゃんはニヤリと笑った。


「馬車に荷物を乗せて貰った時の金がまだだっただろ?給料だ!!」


袋を押し返しそう言った。


「大した事ないけど多分数日は生きれんだろ!

お前図太そうだしな!!」


 隣にいる白が分かるとがくがくと首を振っている。

そんなに図太そうなの俺!!!???

そういって、おじさんは最後に手を大きく振ってから始まりの国を出ていってしまった。


「あのおじ…アランのおっちゃん。

いい人だったなっ!!?」


びゅんっとナイフが真横を飛んでいった。

顔を白に向けなきゃ絶対これ当たってた!!!


「…♪」


団子を食べてからの白はずっとご機嫌そうだった。

それはまさか「気分がいいからお別れまではさせてやるよ」的な奴だったのか!?


「まぁとりあえずこの後ナイフは没収しとくからなぁぁぁ!!!!!しろぉぉぉ!!!!」


白と一緒に行く旅は余韻に浸る余裕はないようだ


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


二話

『団子』

三色の団子。

食べてみるともちもちして美味しいが、昔とは全くちがう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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