白と楽園を探す旅
不憫な紫
第1話…こいつなんか変
「〇〇!!大好き!私が大人になったら結婚してくれるかな。」
黒い髪の小柄な少女は笑った。
その笑顔が俺の心を埋めていく。
小さい、小さい手、まだ齢十もいっていない子供の女の子。
しかし、彼女はいつも夢の終わりでは悲しそうな顔をするのだ。
「……ねぇ、〇〇……
どうして……」
彼女の頬から涙が垂れる。
ノイズがもっと酷くなっていく、彼女の声が聞こえなくなる。
「わたしを……〇〇〇〇〇?」
言葉は聞こえないけれど、けれど。
俺の中で、その言葉は深く傷を刻まれた古傷のように。
俺を痛めつけたんだ。
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真っ暗な牢獄の廊下をコツッコツッと歩く。
大きな黒い布を羽織り、白い髪と顔を隠し、ポケットには短刀を忍ばせた見た目7~8歳ほどの子供。
その子供は歩いていた。
ただ目的地にたどり着く為に。
ほとんどの牢屋の中には誰も居らず、けれどたまに聞こえてくる物音を不気味に感じながら。
目的地へ歩く。
そして数分がたった頃、目的地の前にたどり着く。
一つの牢屋、中には黒髪で幼い顔立ちをした8歳くらいの子供が一人いた。
中の子供はこちらに気付いたようで不思議そうにしている。
相手がどう感じていても構わない。
先程盗んだ牢屋の鍵を扉に差し、鍵をあける。
そしてゆっくりと子供に近付く、ゆっくりとゆっくりと、まるで肉食動物が小動物を狩るように。
短刀を取り出して、その少年に向ける。
タイミングを見計らい短刀を振りかざす……がそれは少年にいとも簡単に防がれてしまった……
……テーブルナイフで……
…………
……
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牢獄の外に出ると錆びれた鉄臭い匂いは無くなり清らかな晴天が差している。
いつもなら、これくらいに気分良かった自分も今回は気分は晴れそうにない。
何故ならば
「これが空か!!!初めて見た!!!」
いつの間にか後ろを追って来ていた少年、自分が殺し損ねた少年にため息が出る。
さっきまでの大人しさはどこへやら、すっかり興奮仕切った表情で周りを見渡し何かを探し回っていて耳を塞ぎたくなるのだ。
さっきから何回も殺そうとしているのだが、結局はすべてテーブルナイフで防がれてしまって結局何も出来なかった、諦めて出直そうと牢屋を出ると勝手について来てしまったようだ。
鍵を締める隙なく着いてきたのはこいつだが。
「なぁなぁ!恩人さん!あれってなんだ!?」
そしてこの子供は自分の事を変な監獄から助けてくれたヒーローだと思っているらしい。
なんともまぁ頭お花畑だな。
ついでに子供の言うあれ、とは木の実の事だった。
種類は知っているし、食べたら美味しい木の実だと知っているが、子供には何も言わない。
言う義理も、声帯もないのだから。
「なにやってんだ恩人さん!」
「……」
ため息を吐き鞄を地面において食事の準備を始めた。
食事の準備をし始めた僕に対して興味津々に聞いてくる子供は、料理というものを知らないのか鍋を頭の上に被ったり、火を起こすための木を投げたりしていた。
出来るだけ彼には感心を一切の向けず、注意を引かないように黙々と準備を進めた。
この食材を切ってスープに入れよう、あっもうこの調味料ないや。
代わりにこれを入れよう。
独学の料理だがまぁ味は調味料を入れればだいたい美味しくなるだろう。と適当な揃えて切ってを繰り返し。
最後に煮詰めて、この『薬草』を入れれば完成だ。
「なんだこれ?飲み物か?」
……子供の興味を引いてしまったようだ。
本当は渡したくないのだが、子供というやつは無視をしたらしただけめんどくさいのが常だ。
お玉で掬い上げ、スープをお椀にいれて子供に差し出す。
この子供が今まで何を食べてきたが知ったこっちゃないが、考えればこのスープの量を一人で処理するのはキツいからという理由にしよう。
まぁ何も食べなくても生きていけるが。
「舌…いひぁい……」
目の前の子供は勢い良くお椀のスープを飲もうとしたがスープが熱すぎたのか、捻り出したような声で鳴く。
冷まさず飲んでしまったのだろう。
舌を火傷したのか、舌を出しっぱなしにしていた。
「もうこれ、俺いらない」
もう食べないという風に、ぷいっと顔を横に向ける子供にちょっと不機嫌になる。
せっかく子供に与えてやったのに、それを一口で残されてしまったら多少不機嫌になってもいいだろう。
「……ふぎゃッ……」
いや気分が治まらない。
スプーンにスープを入れてふーふーと冷ましてやった後に、無理矢理子供の開いている口に不意打ちでいれてやると。
それに子供は変な声をあげて口に含む。
その様子が少し面白い気がした。
けどすぐに表情を変える。
「なんだこれ!なんかいいな!!!」
さっきの不機嫌は何処へやら、すっかりご機嫌になった様子の子供は、すぐにスプーンでスープを掬い上げて口に含む。
「いたい……」
学ばない。
そしてこの子供語彙力がない。本当の五歳児を相手にしてる気分だ。
「なぁなぁさっきのなんかいい奴!もう一回やってくれ!!!」
こちらに顔を近付けて叫ぶ子供。
あまり大声は慣れて居らずびっくりしてしまうが子供はとても興味津々なので怒るにも怒れない。
まぁ怒りの言葉も出ないが。
仕方ないなと思いながら、またふーふーとスプーンの中のスープを冷ましてあげる。
「こんな良いもの。あそこでは食べた事なかったからな!!もっとくれ!」
なんかペットを介護しているような気分だ。
またふーふーと冷まして、また子供にあげる。
あそこ……多分あの牢獄の事だろう。
言うと牢獄の事は、この子供の魂を殺しにきただけで、自分は何も知らない。
ただあそこが『子供』集めて『何か』をしていた事しか。
「いや。」
子供は、急に手を止め呟く、さっきの元気な雰囲気は別人のように。
まるで犯人を突き止めた探偵が、犯人に罪を告げるように。
「前食べた事ある毒の味もする。」
残念……バレててしまったようだ。
子供は意外と鋭いところがあるようで思い通りには行かないようだ。
だが別にわざとな訳ではない。
調味料がなくなっていたから代用しただけだ。
「俺、毒耐性あるから効かないからな!!」
子供はこちらに指差しながら声をあげる。
どうやら、悲しい事にこのスープに混ぜた即効性の毒も何処かしらの子供には効かないようだ。
自分のお椀にもスープを注ぎ手を伸ばす。
「おい!それ毒が!……まさかお前も毒耐性持ちか!!!!」
子供の言葉を無視してスープを飲む。
ッ!!!!あっひゅい!!
いつもはお椀にスープを注いでから多少放置してから飲んでいたが、注いですぐだからか凄く熱くて舌を外に出し冷す。
「おい!だから言っただろ?解毒やく?だってあるなら何処にあるか教えろ!」
……ちょっとうるさい……
火傷に慣れてなかっただけで、毒の効果じゃない。
そもそもこの身体は毒に耐性も持つ事はないし、毒が効く事もない。
焦っている少年を横目にまたスープを食べ始める。
カールの実とサツキの実を一緒にしたのは正解だった、そして味の決め手に黒い睡蓮の毒を入れたお陰で塩味ついていて好ましい。
子供は驚いた顔をしていたが、急に顔色を変えて話題も変えてきた。
子供は本当に気分屋だな。
「なぁお前の欲しい物ってなんだ!?助けてくれたお礼に恩返ししてやるよ!」
その言葉に僕はスープを置いて彼を見た。
……欲しい物?
そんなの決まっている。
彼の心臓部分に指を差す。
「……俺の命が欲しいのか?」
そうだ、逆にそれ以外にいるものなんてない。
首を縦にふる。
けれど彼は首を横にふった。
「ごめん、俺の命はあげられない。」
やっぱりか、そう思ってスープに目線を戻した。
だけど、興味を失った僕に対して、彼は語り続ける。
「俺には運命の人がいるから。」
スープを飲むのをやめて彼を見る。
下らない運命の人なんてそう思ったが彼は深刻そうにそう言うから。
「産まれたその時からずっと、夢を見てきた同じ夢を。
見覚えも、出会ってもない、けど心のもっと深いところでずっと叫んでる気がするんだ。
その子のことを。」
彼は胸の手を当てて静かに。願うように。
風のさえずりさえ忘れさせるように。
「『守らなきゃいけない』って」
そう真剣に言う彼に、心底興が削がれてしまったような感じがして、からになったお椀にまたスープを注ぎいれた。
そんな気まずい雰囲気を感じたのか、彼はまた話題を変えた。
「なぁ!お前どうしてここに来たんだ!迷子か!?」
さっきとの態様の差に呆れていたが、質問にどういうかを考える。
迷子……違わないが違う、もう帰る場所はないのだから。
ただどう表していいのか分からず取り敢えず首を縦にふる。
「そうなのか!じゃあお前の家は何処だ?送っててやる!
家……それを言ってしまっていいのだろうか。
……本当に?
いやもう『あの自分』とは関係ない。
もうないのだから別に言ってしまっても構わないだろう。
どうせ最後には彼を殺すのだから。
そして本を取り出して、ある文字を指差す。
あれ?そもそも彼は文字が読めるのだろうか。
普通の共通語だが、文字が読めない可能性もある。
「……らく…えん?」
あっ良かった。ちゃんと読めたようだ。
首を縦にふる。
「……楽園?」
ああ…そうだ。
まだ彼は殺せない。今の僕には実力が足りない。
だが何の手がかりも、残された人もほとんどいない状況で彼が『楽園』に辿り着けるのが先か。
この短刀で彼の首を断ち切るのが先か。
競うのも、また一興だろうか?
「そうかじゃあ俺がお前を楽園に帰してやるよ!
……お前が助けてくれなかったら俺は死んでいたからな……」
あの牢獄で何があったのかも、何が目的かも知らないが、ろくな事でもないだろうな。
不意に闇を見せる子供に対して、同情の思いと共にある言葉が浮かぶ。
……お前がもっと遅く生まれてたなら簡単に殺せたんだけどな。
「だが……勘違いするなよ!
あくまでも一番は俺の運命の人を探す事だからな!」
子供はスープを飲みながら大きな声で発言する。
そんな中、自分が考える。
この子供の『運命の人』……
…良かったね、愛されるよ。
…………
嬉しいかは別として。
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真っ赤な朝日が空から俺達を差して眠りについていた俺の意識をゆっくりと目覚めへと覚醒させる。
藁を集めた雑な寝床で、眠っている真っ白い髪をした少年、白に話しかける。
ついでに白は俺がつけた!
犬みたいで可愛いだろ!
「なぁ白!起きろ!起きろってぇぇぇ~!」
叫びながら白を呼ぶがそれ以上に眠りは深いらしく……
全然おきねぇぇ~!!!!!
ガチで白は一回寝ると自分で起きない限りはほとんど起きない。
だが無理矢理起こすがな!!!!
もぞもぞとしながらも、まだ寝ようとしている白……
「いい加減起きろよ~!!!!!」
さすがにうるさそうに白が目を開けて、寝ぼけたままこちらを一点に見ていた。
「……」
何も言わない……いや言えないのか白は喋ることはない。
喋れないのは可哀想だけど、ちゃんと言葉は伝わって首を縦にふったり、横にふったりで意志疎通をしている。
「旅に行くぞ!!!白!!」
「……」
「おい待て待て寝るな!!!」
言った瞬間に寝ようとする白を止める。
旅に出るなら速いが吉だ!!!
「おきろぉー!!!!!」
全力で白の耳元で叫んだその時、顔の横を短刀が掠めたのは言うまでもない……
なんか白って殺意凄くない?
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「ということで白!レッツゴーだぞ!」
白は目を眠そうに擦りながら、ついてくる。
足元の木がボキボキと音がしながら森の中を歩いていく。
始めての事がたくさんでドキドキする。
「なぁ白、楽園って何処にあんだ?」
昨日、帰してやると言ったけど結局のところ楽園は何か分かってない、
その言葉に白は眠そうな目を開けて、首を横にふった。
「えっと……そういやお前迷子だったな!
楽園も何処か分かんないんだな。」
じゃあ……何処に行けば良いんだ…?
楽園………
「楽園ってなんだよ~!白~!」
そういうと白は呆れたような顔をしてこっちを見ている、そんな目で見ないでくれ!
まぁいい!取り敢えず今は町?を見つける事が一番だ!!
「でっ!白!町ってなんだ!?」
白の目がまたキツくなった気がする!!!酷い!
そうやってる間に目の前に森なくなっている場所がある事に気付く。
「おい白!森を抜けるぞ!」
俺は白の手を掴んで引っ張りながら走る、それに連れて白も早足になった。
そして森の木に遮られていた太陽が俺達を差していた。
「うわぁ~!!!」
そこに広がっていたのか満面の白い花の花畑だった。
白い蝶達が舞っている。
「なぁ白!!なぁ!!凄いぞ!!」
その綺麗な白い花を触ろうとする。
けれど、触ろうとした手は、白に腕にを掴まれていた。
「白?」
「おーい!そこの子~!シロタエナズナから離れろ~!」
あびゃ!!!!!!!!!
びっくりしてそちらを見て見ると、荷馬車に乗ったおじいさんが叫んでいた。
人だ~!生きてる人初めて見た~!
白の手を引っ張りながらおじいさんの元へ向かう。
「お前さん、迷子か?」
「いいえ!旅人です!」
元気良く返事をするとおじいさんは納得したような顔をして言った。
「こんな若い旅人ならシロタエナズナを知らなくても仕方ないか。」
そう言っておじいさんは荷車に乗り直して。
後ろを指差す。
「始まりの国に行くんだが、良かったらお前も乗せてくぞ。」
「始まりの国?」
「あぁほら中央の首都ジェネシスだよ、ここから数日で着くし、お前さん見たところまだ荷物も持ってない子供だろ。
旅は道連れ世は情けだ。乗れよ。」
おじいさんはぶっきらぼうだが乗せて行ってくれるらしい。
運が良い。
「いいの!じゃあ白も連れてっていいか!?」
白と手を繋ぎながら笑顔でいう。
そんな俺達におじいさんは。
「白?なんかのペットか?」
おじいさんは不思議そうに言った。
俺は慌てて、白と手を繋いでない手で白を指差して言った。
「えっと!この子が白です!」
これで多分伝わっただろうか……と思っていたのだが。
「う~んすまん、分からん。」
そう言っておじいさんは頭を擦った。
「えっ?」
白の方を向くと、白は人差し指を立てて口元に当ていた。
まるで「しー」と言っているようだ。
「あ~……えっといや気にしないで~!」
言われたとおり急いで荷車に乗り込む。
そしておじいさんに聞こえない音量で白に聞いた。
「えっ白って人から見えないの?」
そういうと白は、こくこくと頷いた。
えっ?白って人から見えないの?
「にしてもお前さん、危なっかしい奴やなぁ。」
「えっ!?そうか!?」
白との話をしてる間に、おじいさんが声をかけてきた。
「そうだろう?だって気付けばシロタエナズナの花に触ろうとしているんだから。」
「うーんそのシロタエ?って奴はなんだ?」
さっき声をかけてきた時も言っていたがシロタエ?とは何なんだろう。
「あ~、シロタエナズナって言うのはな。」
そうしておじいさんは馬の縄を引きながら話始めた。
俺は白と荷車に乗りながらゆっくりと聞く。
「シロタエナズナってのはな、見た目は白くて綺麗だが、凄く毒性の強くてな。
食べる処か、触ると触れた場所から毒がじわじわと侵食して行くんだ。
そしてそれがとても痛い。」
「えっ……痛いのは嫌いだ!」
「はは!それなら触らないが吉だな!」
おじいさんは笑いながら言った。
非常に自分にとっては衝撃な事だったが、それよりもちょっと嬉しい。
そして、こそこそと白に言う。
「白!お前、俺を助けてくれたんだな…!ありがとうな!嬉しいぞ!」
そう言うと白は首を横にふった。
えっ!?違うの!?
あっもしかして。
「もしかして白、花畑が荒らされるのが嫌だったのか?」
そう言うと、こくこくと白は頷いた。
こいつ……意外に花好きなんだ……
「でな。」
あっやべ!聞きそびれた!
「元々シロタエナズナは神が作った花と言われていたんだ。」
神?
「何処の神かは知らないけどな。
昔のシロタエナズナの花には毒性はなくて、むしろある国王の不治の病を治したと言う記録もあるんだ。」
「ちょっと待ってくれ!神って言うのはなんだ、えーと、えーとなんか偉い人だったよな!」
神……なんか凄く偉い人だった気がする。
いや分かんないけど!
「お前さん、もしかして神も知らないのか?」
「ギクッ~!」
そんなに大切な事なのか?そんな事知らね~!!!
誰か教えてくれよ~!!
「はぁ……これじゃ国の事も知らない感じだな……いい教えてやる。」
わぁ、凄くいい人だこの人!!!
「まず、そこに、えーと果実の箱の上に地図があるだろ?それを取ってこっちにこい。」
「分かった~!」
箱の上にある地図?地図ってなんだ?この紙か?
持っておじいさんに近付いた。
「これで良いのか?」
「ああ、それだ。」
そういうとおじいさんは教えてくれ始める。
「まずこの大陸には国が8国あってな。」
「多いな……」
つい声が出てしまっていたようだがおじいさんは「ははっ」と笑って続けた。
「まぁ覚えるのは大変だが覚えたらもう忘れないぞ。
それくらい当たり前に聞く名前だからな!
まず中央にあるのが、『始まりの国 ジェネシス』だ。
他の国に行く旅人が一番最初に行く国がここだから『始まりの国』と呼ばれている。
そしてその上にあるのが、『大切の国 アルカ』だ。
相手を愛し、相手に愛される為に努力する理念を持った国だからそう言われている。
そして、その東………」
「すまん、北東が分からないんだが……」
「そうかなら………ここは分かるな?」
「ああ!それなら分かるぞ!」
おじいさんは優しい事に空いた手で地図の右の部分を叩く。
「この国は『技術の国 スペス』だ。
何処よりも発展していて、天才達の集まる国とも呼ばれているな。
ついでにこの国に行くと下手したら変な研究に巻き込まれる可能性あるから注意しろよ。
そしてその下は『庇護の国 テモア』だな。
庇護の国には俺も行った事はないが、あそこの神様は民に過保護だからな。
一度民だと認識されたら国からはもう出られないかもだから行くならここも要注意だ。」
「ひぇ~!ヤバイなそこ!」
「ははっ、そうだな。
だがこういう国にも良いところはあるんだぞ?
そして中央から左上にあるのが『旅人の国 イテア』だ。
ここは、旅人が多くてな自分に合う居場所や幸せを自分で見つけようって国だ。
ついでに俺もここ出身だぜ?
ていうか俺はお前もこの国出身だと思ったんだが違うのか?」
おじいさんはこちらに目を合わせて言った。
うーん正直のところ分かんない。
ずっとあの研究所にいたから何処で産まれたか知らないんだよなぁ~
「うーん、俺あっち側にいたからな~!」
元いた森の方面を指差す。
「庇護の国方面じゃねぇか……
くそっ、てっきり同郷かとかと思って同郷のよしみで送っててやろうと思ったのによぉ~!
そもそも旅人の国以外でそんな幼いのに旅させる国があるとはなぁ。」
「はは!そうかぁ?
でも俺はおじいさんが助けてくれて嬉しかったぜ!」
「ば~か!俺はまだ35だ!
おじさんとも言われようともおじいちゃんではないぜ!
まだまだ現役だぜ~!」
そしておじい、おじさんに頭を小突かれた。
35……てっきり42だと思った!!!
「じゃあ勉強の続きとしますか。
えーとなんだっけ?
ああ、中央の左下の国、『愛の国 メメント』だ。
なんか知らねぇがそこの神様は結婚したらしいぞ
それもめっちゃ別嬪さんとな!
そこの神は昔は男色だって噂されてたのになぁ~」
「だん…しょく?」
「あっガキは知らねぇで良いんだよ!」
「そして左は『戦術の国 ネクサス』まぁ昔は『武術の国』って呼ばれ方だったがな。
変わったんだとよ神がな。
昔はとてつもなく別嬪さんの女神がいたんだとか、ああ~!一回でも良いから見てみたかったぜ。
今は男神が支配してるんだ。」
「なんか強そうだな!」
「実際めちゃくちゃ強いからなぁ…多分一番強いんじゃないか?
そして、中央から下にあるのが『不思議の国 クルックス』
この国は空の上にあって原住民の知る特殊な方法しか上には行けねぇんだ。
だから禁術の魔道書があるだ、空飛ぶドラゴンが神様やら、メルヘン気取った与太話が絶えねぇ。
まっ、パッと話せばこんなもんかな。
気になるところあるか?」
「一通り分かった…けど覚えられねぇかも……あ!ねぇおじちゃんこれはどんな国なの?!」
地図の右上……もやもやと黒いく塗られている場所を指差して言った。
するとおじちゃんは「ああ」と言って身体を寄せた。
「そこはな、何も無いんだよ。」
「何も無い?」
「『イグナロス』っつう呼ばれては居るけど。
ここには、誰も入る事は出来ないし、入った奴は帰って来れなかった。」
「まじで!?」
「ああ、ヤバイだろ!」
おじちゃんは俺に元気良く答える。
ガチでヤバいじゃん……
「まぁとやかくいうと、俺も嫁さんと娘が居なきゃ行ってたんだけどなぁ……」
「…よめ?」
「ああ嫁さんだ。
本当に可愛い嫁さんだぞ!
まぁ俺はもとから一つの場所に留まる質じゃねぇから、あんまりあえねぇけどよ。
嫁さんから言われてんだ、自由にしろってな。」
おじちゃんのテンションが急に上がった、それだけそのよめ?さんが好きなのかも知れない。
「あと神様とかも勉強しとくか?お前何も知らなそうだし。」
「え!良いのか!!ガチでいいのか!?」
「ああ、その国の名産とか教えてやるよ。」
まじか!じゃあ何聞こうかな~……!
あれ…?……白?
後ろから突然抱き着かれたような感触があった。
後ろを見てみると白が抱き着いてきたようだ。
「……あっやっぱりおじちゃん!俺眠たいからまた明日で良い?!」
「うん?構わないが、なら荷台に毛布があるからそれで寝て腹温めるろよ~」
「うん!ありがとうな!話してくれて!」
荷台に戻って座る……そして……
「どうしたんだ白。そんな。」
そういうと白は眠そうにして、膝に頭を置いてきた!
白……お前都合が良い枕が欲しかっただけだな!?
酷い!俺はお前にとって都合のいい男だったんだな!
てっ言ってる間に白は寝てしまった……
こいつなんかめっちゃ寝てるよな……
まぁいいか。
おじちゃんも始まりの国には時間がかかるって言ってたしな。
まだ周りは暗い訳ではないけど俺も少し寝よう。
明日も、きっといい旅をしよう。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
情報メモ
『シロタエナズナ』
記録の中で神の花と謡われていた花。
不治の病を直した伝説もある。
しかし今では猛毒のようだ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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