第4話 忘れたの?

「ーーここが科学実験室だよ」


朝のSHRから数時間経ち、放課後になった。

今は桜坂さんに学園の案内を受けているところだ。


何かとさっきまでは嫌そうにしていた桜坂さんだけど、ちゃんと案内してくれているのを見てる優は、少し安心していた。


「これでとりあえず、大体の学園の案内は終わり」

「ありがとう桜坂さん!けど多すぎて覚えられないね…」

「ま、それは仕方ないね。ボクもたまに忘れることはあるよ」

「そうなんだ」


桜坂さんも忘れるほど、この学園の教室の多さにはビックリする。


最初に国語分割教室から、数学分割、さらには科学実験室や歴史資料室まであったりした。

また、1年かけてやっと全部読めるぐらいの本がある図書室…いや図書館みたいなとこもあった。体育館も武道場もありすぎて、最後の方は何が何だか分からなくなってしまった。


「まぁ、すぐに慣れるさ。それで、天宮くん」

「…?どうしました?」

何故か桜坂さんが急にこちらに来た。どんどん近づいてくる


「〜!!ちょっと桜坂さん…近い!」

「天宮くん、実はね?まだ紹介してない場所が1つあるんだ」

「そ、そうなんですか…?」

「あぁ。だからそこに行こうか…天宮くん?」


び、びっくりした…急に桜坂さんが僕の顔の前まで近づいてきた。もうちょっとでその…

キ、キスしそうだった…


と、とりあえず今は桜坂さんに着いていこう。なんか逆らったらヤバそうな雰囲気を、醸し出してたから。


桜坂さんに着いて行くこと数分、ようやく着いた場所は…"校舎裏"?


「…あの〜、桜坂さん?なんで校舎裏なんかに…」

そう言って瞬きをした。次に目を開けたら、桜坂さんに壁ドンをされていた。


「………」


桜坂さんは無言で僕のことを見つめてきた。そして段々と顔を寄せてきて


「ちょっと桜坂さん、近い…」

「………」


ずっと無言で見つめてくる桜坂さん。すると、桜坂さんがやっと喋った。


「ねぇ、天宮くん。ボクなんでこうしてるか分かる?」


優はその言葉に悩んだ。何故なら何も思い当たらないから


「えっと…すいません、分からないです…」

「…じゃあヒントをあげようか。朝のSHRの時、君がボクに発した言葉が関係してる」

「朝のSHR…?えっと確か自己紹介の時に…

初めてまして僕は天宮 優よろしくね…うーん?特におかしいところはないと思うけどな…」


うーん、と優が悩む時、桜坂は新しいヒントを出す


「じゃあもう少しヒントを出そう。初めてまして、という言葉がヒントだ。分かるかい?」

「初めまして…?えーと…うーんと…」


と悩んでいると桜坂さんは悲しそうな顔をした


「さ、桜坂さん…?大丈夫…?」

「…ねぇ天宮くん」

「は、はい…」

「ねぇ…天宮くん…いや…"優"。ボクのこと本当に忘れてしまったのかい…?」

「え…?今なんて…」


その瞬間、優は全てに気づいた。

初めましてがヒント、僕のことを優と呼んでいる。それは両親とあの3人しか呼ばない。そして、桜坂さんの下の名前が『舞』だということ。つまり…


「もしかして…"舞ちゃん"…?」

「!やっと気づいた…!」


と桜坂さん…舞は僕に抱きついてきた


「ちょ、ちょっと舞⁉︎なんで抱きついて」

「だって、優が気づくの遅すぎるから…!ボクは最初から気づいてた!優があの噴水前を通った時から、教室に入ってきて、隣の席に座った時も、ずっと気づいてた!なのに優は、私に挨拶してきた時『初めまして』とか言うんだもん!ボクはすごく悲しかった!すごく落ち込んだ!優はボクの事もう忘れちゃったんだって…あの約束も忘れちゃったのかと思ったよ…!」


舞は泣きながらそう言った。僕はただ


「ごめん…舞」


そう謝ることしかできなかった。そして舞をただ慰めることしかできなかった。


数分後、舞は泣き止んだ


「舞、本当にごめん…」

「……」

「舞…」


舞は話を聞いてくれなくなった。正確に言えば無視だ。


昔から舞は、勝負事で負けたりした時や泣いた後には、必ず無視をする。

こうなった舞はどうすることもできない。

ただ理由は説明しないと舞が納得しないと思い、僕は喋る


「舞、少しわがままだけど理由を話せてね」

「……」

「僕はちゃんと約束は覚えているよ。僕が始めた約束だから忘れるはずがないけどね」


僕は続けて話す


「もちろん3人のことだって覚えていた。だけどそれは昔のことだけだった。だって…」

「……」

「昔一緒に遊んでた友達が、こんなに美人で、可愛くて、身長も僕より高くて、かっこいい王子様みたいになってたら、誰だって別人だと思っちゃうよ!」

「……!」


僕がそう言った瞬間、舞の顔は真っ赤になっていった。


「ゆ、優…今ボクのこと、可愛いって…それに美人って…そんなのクラスメイトにも、親にも言われたことないのに…」

「もちろんかっこいいもある。けど舞が昔も可愛かったけど、昔よりも可愛くなってたらそりゃ誰だって別人だって思っちゃうよ!」

「〜〜////!?!?」


舞は赤面した顔を手で隠しながら悶えていた。

学園の王子様は、今ではただの女の子だった。


しばらくすると舞は隠していた手をどかした。顔はまだ少し赤かった。


「ゆ、優…その…さっきは無視して、ごめん…」

「全然いいよ。むしろ僕の方が悪いよね。昔の友達を忘れちゃうなんて、ダメだよね」

「…うん、それはダメだよ?ボクすごくショックだったもん。でも思い出してくれたから許す」

「ありがとう、舞…」


すると舞はまた抱きついてきた


「ま、舞?今度はどうしたの…?」

「別に何も?ただ抱きつきたかっただけだよ。悪い?」

「べ、別に悪くないけど…」

「けど…何?」

「そんなに抱きつかれると…い、息が…」


舞は徐々に力を入れて来て…舞の…む、胸に押し付けられて…息ができない…


「ふふっ、いいよ、優。ボクの胸の中で寝ていても」

「それは、色々と終わりそうなんで大丈夫です…」


第5話に続く


次回のお話を覗き見

「優、これから君の家に行ってもいいかい?というか行くけどいい?」


作者からコメント

実は設定上、優は160センチだけど、舞さんは180センチもあるらしい。160センチと180センチの人がハグしたら、160センチの人は、180センチの人の胸に顔が来ちゃうらしい。

どうでもいい!

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