第2章 王立士官学校⑤
大陸歴1269年8月25日。王立士官学校第八十期生が教育課程を修了し、卒業の日を迎えた。少尉に任官した新米士官たちは、これより各地の部隊に配属され、経験を積み、将来の指揮官として成長していくこととなる。
シュトラウセン志塾の初代生たちも同日卒業した。しかし、彼らの配属先は通常部隊ではなく、全員が例外なくヴィルヘルム直属の部隊への配属を命じられた。
「第101親衛戦闘団、編成完結!」
同年9月1日。首都ベルデン近郊、ローゼンベルク王国中央軍演習場にて、編成完結式と司令官就任式が挙行された。壇上に立つのは司令官ヴィルヘルム・フォン・ローゼンベルク。編成完結を報告するのは、戦闘団幕僚長ヘルマン・フォン・シュトラウセン准将である。
列中には志塾卒業生たちの姿があった。新品の少尉の階級章を輝かせ、各小隊および特務部隊の指揮官に任じられている。
彼らが身にまとうのは、黒を基調に赤を差し色とした新品の軍服。いまはこの戦闘団だけの専用装備だが、後にローゼンベルク軍の標準装備となる制服である。ここから新たなローゼンベルク軍が始まる──それを象徴する姿だった。
壇上から千名の私設部隊を見渡し、ヴィルヘルムは厳かに訓示を述べる。
「我々はこれより東部戦線に派遣され、来る戦いに参戦する。我が頼もしき戦闘団の諸君に課せられる任務はただ一つ──この戦争を終結させることである」
その胸中に去来したものは、誇りか、責務か。あるいは、その両方かもしれない。
世に“ヴィルヘルム軍団”と呼ばれることになる戦闘団。その結成式は、ヴィルヘルム・フォン・ローゼンベルクという人物の名を歴史に刻む、最初の出来事として記録されることになる。
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狼たちの牙城ー覇道の軌跡ー @azumakairin
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