第4話 久我からの通信

 一年目、生態反応確認バイタルチェックで目覚めた時に久我からの通信が入っていた。


「元気か、篠宮。この連絡が届いているってことは、ロストしてないんだな。――すまん、冗談にしてはタチが悪かった。それよりも、聞いて欲しいことがある」


 久我は画面に向かって、話しかける。


「朗報か悲報かわからないが、安楽死とアトラクトスに向かう人間が予想以上に多かった……食料の再編成で、俺たちはあと4年か5年は生きられるらしい。つまり、お前が着くころに、俺は死を迎えるんだ。なんだか変な感じだな」


 悲し気な表情を浮かべる久我。

 一方通行の通信では、僕がいま返答したところで聞こえないだろう。

 そのまま久我は話を続ける。


「どれが正解か、いまでもわからない。迷わずに行った高峰か、迷いながらも行った篠宮おまえか、ここで数年後の餓死を待つだけの俺か」


 どうやら、いつもより以上に疲れている様子だ。

 

「なあ、篠宮……あれから、高峰からの連絡がないんだ。なんでだろうな」


 そういえば、今の僕から久我に映像を送ることは……できないんだった。異空間連絡は……地表に到達後、カプセルは自動で割れるから、そこではじめて通信ができると聞いたっけ。


「こちらからは、また連絡するよ。死ぬギリギリまで、お前からの連絡を待ってるさ。到着後なら、4年後かな。互いに無事ならいいんだがな」


 そうして、この日の通信は切れ、僕は再び眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る