第一依頼 楽しい遊園地 8話
遊園地での出来事から数日が経ち、事後処理に時間がかかったが、やっと落ち着くことができた。元々依頼者が少ないらしい探偵事務所は、いつも通りの静けさを取り戻して……いない。今回の件で変わったことがあるのだ。
「おじゃまします」
「お、いらっしゃい!バタークッキー」
「陸!」
それは、事務所にバタークッキーが度々遊びに来ること。陸に会いに来ているらしく、会う度に嬉しそうに抱き付いてくる。
別室から出て来たマミは、バタークッキーの存在に気付くと手を振りながら近付いていった。
「バタークッキーちゃん!遊びに来てくれたの?」
バタークッキーは複雑そうな表情でマミを見る。
「前にも伝えましたが、その呼び方をしていいのは陸だけです。わたしの名前は古目桔梗。苗字か名前かフルネームで呼んでください」
「分かった!きーちゃんって呼ぶね!仲良くしよ〜」
「何も分かっていないじゃないですか……まあ、恋敵ではないようですし、仲良くしてあげてもいいですけど……」
最後の方は小声でゴニョゴニョと言っていたため、陸もマミも聞き取れなかった。聞き返そうとしていると灯がやって来る。灯はバタークッキー……ではなく、桔梗が来ていたことに既に気付いていたようで、呆れ気味に声をかけてくる。
「また来たのかい?ボク達は今仕事中だよ。おかしな夢の話を聞いてほしいのなら、日を改めてほしいな」
「いいじゃないですか、お客さんなんて全然いないのですから。それに、夢ではありません。わたしは陸が魔法を使うところを絶対に見ました」
桔梗の言葉に、陸は何とも言えない顔をする。そして、最初に桔梗が事務所に来た日を思い出した。
入って早々に、「ここが魔法使いの探偵事務所ですか!」と言い放った桔梗。詳しく聞くと、陸がフェリとハイタッチをした辺りで目を覚ましていたらしい。その為、陸が呪文を唱えたことも、星檻が遊園地を吸い込んだところも全て見ていたのだ。
灯が誤魔化してはいるが、あまり意味をなしていない。
桔梗は陸から離れ、灯に向けてドヤ顔をする。
「ふふん、騙されませんよ!」
「子供は想像力豊かだね〜。そんなこと、周りに言ったら嘘吐き扱いされるよ?」
「言いません〜!言う相手もいませんし」
「灯君、桔梗さん、喧嘩は駄目ですよ。はい、お菓子を食べて落ち着いてください」
そう言いながらフェリがやって来た。手にはマドレーヌが沢山載ったお皿があり、美味しそうな匂いを漂わせている。
机にお皿が置かれると、桔梗は歓声を上げながらソファに座った。
「わ〜!ありがとうございます、フェリのおじ様」
「ちょっ、それはボク……達の物だよ!依頼人でもないキミは遠慮するべきではないかな!」
「それが子供に言う台詞ですか〜?大人なら『全部キミが食べていいよ』って言うところですよね?……あ、陸〜!こっち、隣に来てください!一緒に食べましょう」
結局、喧嘩は続いてしまった。灯が小学生相手に本気で言い争うせいで、まるで子供が2人いるようだ。……しかし、そんな光景も微笑ましい。
陸は言われた通りに桔梗の隣に座ると、この騒がしさを楽しみながらマドレーヌを頬張るのだった。
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