メタ考察導入
ふたりは、そう、永遠の漸近線。
煌めくダイヤモンドよりも、ダサいシャーペンが好きだった。
脆く汚いところなど、あなたが来てはいけないと、思っていた。
図書館四階、通りを見下ろす明るい窓際の席で、駆け出しのアマチュア作家は満足げにキーボードを叩いていた。
ふと読み返してみた。次第に、直哉があまりにも意固地で「鈍感すぎる」なことに、不自然さを感じ始める。
「直哉はおかしい。初期パラメータを間違えたかな? 」
そして、ふたりを両想いにするにはどうすればよいか、考えを巡らせた。
(そもそもこのふたりの設定おかしい。両想いなんて無理。本来付き合えるふたりじゃない。理由のほとんどは、直哉にある! コイツはまったく自分の枠から一ミリも出ようとしない。学業最優先も分かるけどさ~少しはそこから出なよ! ……直哉のストライクゾーンまで、遥のスペックを落とすと小説の否定になっちゃうからダメ……仮に遥のアプローチをもっと強火にしたら、コイツ絶対超速遁走する! ……ふたりを取り持つキューピッド役追加? ……だとしても、やっぱり直哉は高速遁走確定ルート……ライバルキャラ投入して三角関係に……ならない! できない! ……直哉に対するライバルを作ると、直哉は即座に諦め、たちまち勉強に逃げ込む。……遥に対するライバルは……遥が強すぎる。無理に作ると非現実な女子の二乗。……ふたりのキャラクターでも四苦八苦なのに、これ以上登場人物を増やすと、話数増加・長大化、私の力じゃ収拾できない。……これは却下)
「卒アルのシーンで、実はバレンタインのカードが残っていて、比べられたらどうだろう? 」
(いや、それでは原作を殺してしまう。ふたりが漸近線ではなくなり、交差してしまう)
「どういうこと? 」
(カードがあれば、直哉はすぐに遥の秘めた想いを知る。彼の選択肢は二つ。自分の真意を遥に伝えるか否か)
「伝えたら? 」
(ふたりが交差して死んだ原作がさらに死ぬ。今更伝えてどうなるのかということにもなる。未練がましく美しくない)
「伝えなければ? 」
(甘ったるくセンチメンタルになるだけ。蛇足になるだけ)
「……これは、数学問題のときに、直哉の精神を一度粉砕するしかない」
すべての苦闘はここから始まった。次々にアイデアが浮かんで、寝食を忘れるほどに面白く、社会生活に支障を来すほどの苦闘(笑)。
次の更新予定
鈍いって、誰の事? 真崎 一知 @MASAKIICHI
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