第9話 托卵

ミステリーサークルが出現したことがあるとは言っていたが、正直、話半分、いや、都市伝説くらいに聞いていた。


まさか、本当だったとは。


ミステリーサークルはタカさんの家の畑に現れたので、タカさんは荒らされたと怒っていたが、見物に行った私たちには気前よく、また沢山の猪肉をくれた。




タカさんの家を出ると、うちの屋根の煙抜きから煙がでているのが見えた。

外出時に灰を被せておいたので、煙は立たないはずだ。


新島と慌てて家に戻ると、囲炉裏端に長い白髪の女が座って、火に当たっていた。

薪の火が燃え盛っている。

女は白髪といっても、顔を見るとわたしより少し年上かというくらいだ。


その膝の上には、ごんたろが乗っており、随分懐いた様子である。


女はこちらを見てふっと笑うと、

「火を大きくしておいてやったぞ」

と言った。


「あの……どちらさま?」


額からは角が、長いものが二本、短いものが四本生え、大きな目は澄んだ赤色をしていた。

そして、背中には白い翼が映えている。

見るからに只者ではない。


これは……。


「鳥人間や!」


「いや違うでしょ」


新島の鳥発言は油断がならない。

翼と言っても、鳥のような羽の生えた翼ではないのだ。

むしろそれは……。


「まま!」

ごんたろが嬉しそうに言った。


「え? ごんたろのおかん?」

新島が驚く。


そう、女の翼は、ごんたろのものとそっくりなのだ。


「如何にも。我がこの子の母じゃ」


女がいうと、身体の後ろで何かがべちん、と動いた。

尻尾だ。

白くて長い、これもごんたろの尻尾とよく似ている。


「そんな……」


新島は打ちひしがれていた。


「らぶちゃんの子やと思とったのに……」


この期に及んでまだそんなことを言うか。


「産卵のあとに、勇者どもが我を倒しに来ると知ってな。安全に子が孵れそうなここに運んだのじゃ。そしたらそっくりな卵があったので、そっちは我が食って入れ替えたのじゃ」


「それってもしや……“托卵”⁉」


新島は少し嬉しそうだ。


「勇者たちは……?」


訊くと、母ドラゴンはにやりと笑った。

口が耳まで裂けそうな、ぞっとする笑みだ。


母ドラゴンは、膝のごんたろを撫でながら言った。

「もうやつらの心配はない。だからこの子を連れ帰る」

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