第7話 原始焼き
「今日も
「ンあぁ!」
夕方ごろ、ひと抱えある大きなボウルを持って、新島が元気に入ってきた。
囲炉裏端で丸まっていたごんたろは、顔を上げて元気よく挨拶を返した。
「おぉ! やっとるやっとる。やっぱりいいなぁ! 囲炉裏は!」
さらに続く豪快な声はタカさん。
ここの家主だ。
「魚持ってきたぜぇ! 地酒もあるし、今日はコウちゃんのウェルカムパーティーだ」
新島のボウルには下処理された魚と海老が入っていた。
魚は二人で管理釣り場で釣ったイワナとニジマス、合計十匹らしい。
他にも買ってきてくれた魚介があった。
タカさんは慣れた手つきで、魚に串を刺し始めた。
わたしもやってみるが、結構難しい。
串に刺した魚と海老は、塩を振って、囲炉裏の火を囲むように、垂直に串の部分を灰に刺していく。
「魚は立てて焼くのがうめぇんだよ。頭を下にするとよぉ、油が下に落ちてきて、頭までカリカリに揚がるんだよ。たまんねぇぜ」
原始焼きというやつか。
他にも切り身の魚を網で焼く。
炉端焼きの店かというくらい、囲炉裏が賑やかになった。
「ほぅれ、焼けたぜぇ! ごんたろも食えよォ!」
「ンあっ!」
先に焼けた網焼きの魚を皿に置いてやると、あぐあぐと食べはじめた。
「えぇ食いっぷりやなぁ」
新島が感心したように言う。
ごんたろは綺麗に平らげると、満足そうに口の周りをぺろりと舌で拭った。
タカさんはそれを見て笑っている。
そこで、あれ、と思う。
タカさんは初めてごんたろを見たのでは?
この奇怪な存在に、なんとも思わないのだろうか。
率直に尋ねると、タカさんは言った。
「ガキのころに、何度か見たことがあんだよ。一度は酷い手負いでなぁ。手当して、ここで作ってた牡丹鍋食わせたらえらく気に入って、家族が帰ってくる前に全部食っちまいやがった。お陰で俺が怒られたぜ」
タカさんは豪快に笑いながらも、どこか懐かしそうだった。
やがて焼けた原始焼きの魚と海老を皿に置いてやると、ごんたろはまた夢中で食べた。
「美味しい?」
と訊くと、
「ンあぁ!」
気持ちのいい返事が返ってきた。
わたしも、イワナを食べてみる。
タカさんと新島が、こちらをじっと見ている。
一口、齧る。
ん……、これは……。
「美味しいっ」
表面はぱりぱりなのに、中の身は柔らかくしっとりした食感をしている。
魚は何度かグリルで焼いて食べたことがあるが、こうはならなかった。
わたしの一言に、2人の顔がぱっとほころぶ。
「せやろせやろ!」
「あったりまえだ! ガッハハハ!」
今夜の囲炉裏端はとても賑やかで、豪快に笑うタカさんは、嬉しそうで少し泣きそうにも見えた。
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