第5話 初
「ま…まー!」
ごんたろが言葉らしきものを発した。
しかも「ママ」。
この言葉の響きには、ジンとくるものがある。
きっと生涯忘れられない思い出となるだろう。
それが、自分に向けられた言葉であったならば……ね。
ママと呼ばれた当のエミューのらぶちゃんは、すごく迷惑そうだ。
「おぉー! そうやぞ、ごんたろ! ママやぞ!」
新島はなぜか喜んでいる。
いまだにらぶちゃんの卵からごんたろが生まれたと思っているのだろう。
らぶちゃんの背中に乗ったごんたろは、その長い首にまとわりついて離れなかった。
今日は新島がエミューのらぶちゃんと戯れる動画を撮るということで、朝からカメラマンを頼まれたのだ。
エミューの動画にドラゴンを出せばバズること間違いなしだが、ごんたろの出演部分はカットだ。
世の中が混乱する。
新島は非常に残念そうだったが、数字を前にして理性を失うのは配信者の業の深いところだ。
しかしカメラは回していたので、ちゃんと「初めてのママ」は記録に残った。
わたしはごんたろを連れて家に帰り、囲炉裏に火を付けることにした。
あとで新島が美味しいパンとベーコンを持ってきてくれるらしい。
理科の授業でマッチを使った他には、人生でガスコンロ以外で火をつけた経験がないので、いざやろうとするとなんだか怖くなる。
街を離れた途端、わたしは何もできない人間になった。
新島もやがてくるだろうから待ってようかなと思っていると、ごんたろが横にやってきて、ふぅーと息を、いや、火を吹いた。
見事な火力調整。
火種に火がつく。
「すご……」
まさかの、炎属性だったのか。
いや、今の『初めての火炎放射[弱]』こそ、記録に残したかった。
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