第6章「小さな試練と絆の確認」
週末の夕方、未来は大学を出て陸橋を歩いていた。
悠斗の気配はいつも通り隣にあり、未来にとってそれは自然な存在になっていた。
街の音や風景は普段通りだが、悠斗の存在が加わるだけで、世界は少し不思議に感じられる。
「今日は少し人が多いね」未来は小声でつぶやく。
「うん。でも君と一緒だから気にならない」悠斗は静かに答える。
その時、未来のスマートフォンに彩乃からメッセージが届く。
「未来、大丈夫?最近ずっと一人で歩いてるって聞いたよ」
未来は少し戸惑いながらも返信する。
「うん、大丈夫。でもちょっと誤解されてるかも」
悠斗は未来の動揺に気づき、そっと尋ねる。
「未来、どうしたの?」
「友達に、私が一人で歩いてるって思われてるみたい…」
悠斗は深く息をつき、未来に語りかける。
「誰にどう思われても関係ないよ。僕たちに大事なのは、君と僕の時間だ」
未来は胸が温かくなるのを感じ、笑顔を取り戻す。
――そうだ、誰に理解されなくても、悠斗と私は一緒。
その夜、未来は家で夕食を準備していた。悠斗も横で静かに見守る。
「今日はオムライスにする?」
「いいね、手伝うよ」
未来は鍋をかき混ぜながら心の中で考える。
――幽霊でも悠斗と一緒だと、普通の生活が少しだけ特別になる。
「ねえ、悠斗」未来が声をかける。
「うん?」
「私、最近少し強くなった気がする」
悠斗は少し驚いたように微笑む。
「そう思えるなら、僕も嬉しい」
翌日、大学で授業を受ける未来。悠斗は隣でそっと存在を感じさせる。
時折、メモを残してアドバイスする悠斗。
「ここ、少し違うかも」
「ありがとう、幽霊なのに助かる」
放課後、未来は友達と話しているとき、悠斗の存在が誤解されそうになる。
「あれ、未来、一人でいたんじゃなかったの?」彩乃が驚いた表情で尋ねる。
未来は内心焦る。
――悠斗は見えないけど、私には確かに一緒にいるのに…
帰り道、未来は陸橋で悠斗に正直に打ち明ける。
「友達に誤解されちゃった。でも、悠斗は私には本当に一緒なのに」
悠斗は未来の手を心で包むように伝える。
「大丈夫。僕たちには僕たちの時間がある。誰に何を言われても変わらない」
未来は深く息をつき、確かな笑みを浮かべる。
――そうだ、私は悠斗と一緒にいる。それが一番大事。
夜、布団に入った未来は今日の出来事を思い返す。
誤解や小さな試練はあったけれど、それを乗り越えることで、未来は自信を持ち、二人の絆はさらに深まった。
夢の中で、未来と悠斗は陸橋を歩き、話し、笑い合う。
幽霊であることも、過去の影も、二人の関係を特別にしていた。
不思議で温かい時間が、今日も確かに流れていた――。
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