チビウルフ

心強い仲間はできた。

午後ちゃんの使用魔法はまだわからないが、南瓜人パンプキンは基本的に魔力が高い種族なので、恐らく強い魔法だろう。

「あっ、あのー、まず、何すれば…?」

ウィチは恐る恐る午後ちゃんに問いかけた。

「あ゙ ー、どうするかねぇ…。まあ、まずはアイツの居場所を探んなきゃだよねえ」

『アイツ』というのは恐らくニックの事だろう。

「わ、わかりました!」

すると午後ちゃんは不思議そうな顔でウィチに聞いた。

「……でもウィチちゃんさあ、なんでアイツに恨み持ってんの? ウィチちゃんさ、まだ未成年でしょ? 何があったの?」

その質問を受けてウィチは、昨日のことが蘇り少し瞳が潤った。

「あー、ごめんごめん。そうだよね、初対面でそういうのには触れちゃいけないよね。デリカシーなかったわ。」

肩に乗っているドラは少し怒ったかのように午後ちゃんを睨んだ。

「キ…」

それに気づいた午後ちゃんは慌ててドラをなだめるように言った。

「あぁ、そんな怒んないでよ使い魔君。悪気があったわけじゃない。」

少し落ち着いたウィチは小さな声で午後ちゃんに言う。

「お店… 荒らされちゃって…。」

すると午後ちゃんは納得したように相づちを打った。

「ぁあ~! 納得、納得。 なるほどねぇ。」



昨日のことを詳しく説明した。

そして、午後ちゃんがニックを探している動機も知ることができた。

一言で言えばのニックの裏切りだ。ニックと午後ちゃんはどうやら同じ種族らしい。

「そうだったんですね…。」

午後ちゃんは少し怒りが混じったような、悲しんでいるような声で言った。

「あぁ。アイツは一生許さない。いや、許せない。」

ウィチには被り物越しでも、少し午後ちゃんがかっこよく見えた。

「さて、思い出話はこれでおしまい。ほら、行くよ。」

午後ちゃんは立ってウィチとドラを急かす。

「ど、どこに?」

「とりあえず、目撃情報集めかな。アテもなくうろうろするのは効率が悪いから。」

すると午後ちゃんは村の方へ走っていった。

「まっ、待ってください~!」

ウィチは体力がないため走るのが苦手だ。そもそも浮いてる南瓜人パンプキンに走るという概念はあるのだろうか。

「早く来な! 時は金なりだよ!」



「つ、疲れました…。」

意外にも午後ちゃんは優しくて、近くの木陰で休もうと言ってくれた。

「今んとこ目撃情報は無しかあ。」

すると小さな草むらが少し動き、何かが飛び出してきた。

「なに!?」

ウィチはギリギリでその『何か』を躱し、少しよろけた。

怪物モンスターか!」

午後ちゃんは叫ぶと長いマントから細い手を出し、指から光のようなものを出した。

「ギィ!?」

その怪物モンスター、チビウルフは光をもろに受け、体制を崩す。

するとチビウルフの様子がおかしくなった。なにか、目的を探すような仕草だ。

「ギー?」

「早く逃げろ」

午後ちゃんは声量を抑えてウィチに逃げるよう指示する。

「わ、わかりました」

そうしてチビウルフから逃げ切った二人を一匹だが、さっきのチビウルフの仕草は何だったんだろうか?

「あの、さっきのは…?」

「あぁ、俺の魔法」

どうやら午後ちゃんは狂暴で名高いチビウルフの敵意を全く無いことにできる、凄い魔法が使えるようだ。

魔法が大好きなウィチは興味津々に聞いた。

「えぇ!?午後ちゃんの魔法なんですか! すごい!なんていう魔法なんですか!?」

すると午後ちゃんは照れるように笑い言った。

「そ、そんなすげぇモンじゃねえよ。記憶を消す魔法だ」

記憶を、消す魔法……? もしかしたら、昨日の私の記憶も……?

ウィチはふと考えてしまった。

しかし、それは責任から逃げることになる。店を守ることのできなかった責任。

でも、あんな記憶、要らない………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大切な店を荒らされたので復讐します こけっこサン @kokekkoP

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ