第7話 【周知】申請メニュー選択時のセルフチェックについて

 運ばれてきたレモンサワーと、ハイボールのジョッキをそれぞれ少し持ち上げ、

「乾杯」

「乾杯」

 ガラスの当たる音が小気味良かった。


「にしても、俺の感想の熱量、マジで申し訳なかったです。でもこれがヲタクの本懐ってやつですからねー。困らせちゃいましたよね?」


 ふふん、と鼻を鳴らして、冗談交じりに問うてみる。茶化した感じにしないと、引かれてしまった時、どうすればいいかわからないから。


「困る? あれ? 何言ってるんだい? 勉強になった、って言わなかったっけ?」

 鞄から取り出した数枚のA4用紙。びっしりと並べられた『閃光天使ライトニングセインツ』の感想だった。


「方法は問いませんって、言っていたから」


 恥ずかしそうに頬を指で掻く織田課長は、

「可愛い」

 そう、思った。


「凄いじゃないですか。ちょっとこれはじっくり見せてもらいますね!」


 熱量。質。こんなに完璧な報告書は見たことが無い。これが、織田課長の、報告書。


「って……。感想文のレベルを超えてますって! これじゃ俺、解説なんてとても」

「駄目だった……?」

「いえ。百点満点です」

「そう。良かった……。引かれてしまったかと思ったよ。お、鮪が来た!」


頼んだお寿司が運ばれてきた。


「食べましょ食べましょ」


 寿司を口に入れた織田課長が固まった。


「え、どうかしました……?」


 織田課長がレモンサワーを一気飲みした。喉つまりでもしたのだろうか。


「……サビ抜きにして頼むの忘れた」


 噴き出してしまった。さすがにこれは、可愛いが過ぎる。

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