第5話 では笄はどうでしょう



 ではこうがいはどうでしょう。

 これもお洒落なお侍さんだったら鞘に付けている印象がありますし、ええ、時代劇の中ですけどね。小柄こづかよりもさらに小さいですから、つかまわりのこしらえに意匠も揃え併せて嵌めて、小柄こづかとも一緒にセットで刀の鞘に付けたなら、持ち歩き易いですね、昔のお侍さんだったなら。丁度この刀にも、小柄こづかと併せてあるように。

 女の人なら髪飾り。


 はい。そうですね。投げれば刺さると思います。名人ならば。


 手裏剣、に入りますかねえ。


 え、入りますか。手裏剣に。


 ただ、世の中から見て、今の世ですよ。現代日本。そもそもこうがいって手裏剣かどうか以前に認知度があまりにも低いのではありませんか?師範。


 ええ、私は勿論知っていますよ。昔の人が持ち歩いたくし、みたいなものですよね、こうがいは。他にも色々用途の異なるものがあったでしょうが。


 あれ、いまくしって認めましたよね、お爺ちゃん師範。

 これは手裏剣じゃないですね。くしですものね、そうでしょう。


 ええ、はい、はあ。

 刺さるのならば手裏剣ですか。握っても投げても護身に使えれば充分手裏剣として認められると。それがくしでも髪飾りでも。

 はあ、そうですか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る