第4話 小柄についてはどうでしょう



 小柄こづかについてはどうでしょう。

 時代劇とかだとお侍さんが投げたりしますね。現代風に言うなら投げナイフの一種でしょうか。

 

 へえ、英語で言うとスローイングナイフ。全部。そうなんだ。投擲用の刃物やそれに類するものはスローイングナイフ。それで一応は通じると。

 そうですか。

 ああ、確かにそうですね。手裏剣自体、スローイングナイフですもんね。一般的な手裏剣は大体。


 あれ、お爺ちゃん、いえ、師範。発音がネイティブっぽいですね。

 英語、喋れたんですか。


 はい。ほう。若かった頃に色々と。

 色々。してたんですね。へえ、あ、はい。はい。それはまた別の時にでも聞かせて下さい。


 今は手裏剣の話です。


 小柄こづかです、小柄こづか。昔のお侍さんが刀の鞘に付けていた小さな刃物。とにかく便利そうなアレ。

 そうそう、コレです。試斬しざん用とは別に置いているこの刀の方は、鞘に小柄こづかひつが付いていますから、こちらの小柄こづかも、刀と共に鍔を通して稽古場でいつも見守ってくれていますよ。


 小さい頃に、毎週一緒に観ていた時代劇でもよくありましたよね。

 敵の気配を察したら刀と同じ剣を振る動きでひょいっと投げる。で、刺さる。棒手裏剣とも共通して振り、というか打ち方は刀の振りの延長として指元から離れてからの回転をで覚えるのが大変ですが、棒手裏剣よりはこちらの方が正確な稽古の仕方に慣れるまでが早いかたが多いという印象もありますね。

 まあ、棒手裏剣の方は振り、打ち込みにも色々あって御自身の体から見て放つ角度毎ごとに身に付ける感覚も変化するように感じられる方が多いでしょうし、連続して打つなら棒手裏剣だけれども、それはそれでまた何本もの棒手裏剣をころもに仕込んで、打つと同時に次に打つ剣を手の内に備えて振り始め、またその次の剣を備える為にと両腕を体ごと無駄なく動かし続ける必要が有りますから、そういった鍛錬に励む同門を見てしまうと小柄こづかの方から先ず入ろうかな、とこちらを手に取る初心者の方の気持ちも何となく分かります。苦しいですからね。ああいった稽古は。その積み重ねからして。


 この小柄こづか、これも手裏剣、という認識でよろしいですね。ええ。


 ただ、今の世間はどう言うでしょうね。

 古いサーカス団のナイフ投げじゃないの、とか言われそうですが。


 はい、言われたとしても手裏剣ですか。まあ剣っぽいですしね。実際、剣に付けてありますし、これ自体も小さな刀みたいなものですし。元々は小刀こがたなな訳で、剣ですね。はい。剣です。これは。

 手裏剣です。大丈夫です。師範、分かっております。

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