友人

「そういえば、青林あおばやしいずみと知り合いなんだってな」

 校内で学友と話していると、その内の一人が口を開いた。

「知り合いというか、下宿先が同じなんだ」

 菫青きんせいが答えると、他の友も次々と水晶すいしょうの話題を持ちかけてきた。

「アイツ、別の学校の女どもにキャーキャー言われてたぞ。女はああいう辛気臭いのがいいのかな」

「確かに渋い顔をしている時は多いけど、世間で言う美男子なんじゃないか」

「人と話をするのを見たことないな。青林とはどうなんだい」

「一緒に暮らしているから、よく話すよ」

「頭がいい分、面倒な話をしそうだよな。むしろ、くだらない話ばかりとか?」

「まあ、色々とね。面倒というより、僕が思い付かないようなことを考えていて、聞いていると楽しいよ」

 学友たちは口々に言い合う。

「休みがちの癖に成績優秀者なのが羨ましいよな。試験のヤマとか教えてほしいよ」

「でも、一緒にいる青林が俺たちと同じぐらいなら、聞いても変わらないぜ」

「というか、アイツは卒業したらどうするんだ?」

「青林は聞いてるのか。あ、お前は家を継ぐんだろ」

 そういえば、将来のことは特に話していない。

「聞いていないや。いつか聞こうかな」


「ねえ、あれが泉さんよ」

 三人の女学生が、遠目で見える美青年に色めきだっている。

「かっこいいわ。お話してみようかしら」

「やめときなさいな。ああいう人って冷たく断りそう」

「ねえ、ちょっと。誰か来たわ」

 美青年のそばに、二回りも大きいような男子学生が寄ってきた。

 美青年は大柄な学生と連れ立って、離れてしまった。

「あーあ、行っちゃったわ」

「二人とも楽しそうに笑って、お仲良しなのね」

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