大掃除

 高齢の女性である大家に、納屋の整理を頼まれた。

 丈夫な菫青きんせいが重い荷物を運んで、大家の指示で不要のものを外に出す。

水晶すいしょうも掃除かい?」

 荷物を移動している菫青が、バケツを置いて雑巾を絞る水晶に話しかけた。

「これ位はやらんと。住まわせてもらっているからな」

「でも、無理はしないで。大家さんも水晶の体調を心配しているから」

 各々が仕事を進めていると、納屋から七輪が出てきた。

「そっちが掃除するなら使っていいよ」

 大家に使用の許可を得たと、窓を拭いていた水晶に報告した。

「ご飯が余っているから、焼きおにぎりを作ってもいいって」

「料理をロクにせんお前には危ねぇよ」

 掃除を終えた水晶が手を洗って、台所で焼きおにぎりの準備を始めた。

 その時、中途半端に余った餅粉の袋を見つけた。

「すみません。餅粉で団子を作ってもいいですか?」

「勝手になさい。台所、綺麗にしときなさいよ」

 ここの大家は割と自由なのだ。


 仕事を終えて外で座って待つ菫青の許に、盆を持った水晶が来た。

 盆の上には白い握り飯の他に、串に刺さった小さな団子が載っている。

「まずはお前の分からな」

 水晶は七輪に握り飯と団子を乗せて、醬油のタレを塗って焼く。

 腹が減っている菫青は、喜んで焼きたての握り飯を頬張った。

 すぐに団子が焼けて、菫青は一個口にする。

「美味しい! 一番好きな味かもしれない」

「大袈裟だな。焼くだけだぞ。しかし、いささか作り過ぎた」

「そうだ。大家さんに持っていきなよ」


「あら、いずみさんからなんて珍しいわね」

 意外そうにした大家だが、貰ったものは喜んでくれた。

 ちなみに、水晶がいない間に菫青が焼いてみた二つ目の握り飯は、焦げた。

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