第3話 リセット
「いつもお前ばっか目立ちやがって、赤魔道士だって、本当は俺がなるはずだったのに……」
リュウイが視線を落とす。
申し訳無さそうに。
海堂が、笑った。
「まだわかんねぇか? あれは俺が指示したんだよマヌケェ!!」
「……」
「ギャハハ!! お前がゲームで復活してマジでビビったが、なんだかんだで作戦通りだぜ!! あとは、てめぇのゲームデータを全部!! 俺に移すだけだ!! そうすりゃあ赤魔道士になるためのレアアイテム『王室の赤マント』は俺のものになる!!」
「お前……なにを……言っているんだ」
「騙されてたんだよお前は!! 俺のこと親友だとでも思っていたか? ざけんな、最初からお前を利用するために近づいたんだよ。お前は上手い、だから攻略に使えると思ってな。なのにいつも俺より目立ちやがって、リーダー気取り、ネットでもお前のことばかり褒めてよ……。ムカつくんだよ、50万円も課金している俺より、なんでお前が……」
嘘だ。
そんな、バカな。
本気で言っているのか、こいつ。
「例の運営のミスで起きたスタンピード事件のときも、最大規模のPvP戦争のときも、俺が仕切りたかったのに、一人で勝手に……なにが混沌の英雄だ!! 気持ち悪いんだよ!! 調子に乗りやがって、運がいいだけのくせに。俺の方が知識も実力もあるのに!!」
「海堂……」
「お前なんか、友達と思ったことなんぞ一度だってねぇんだよ!!」
CBFでは過去、いくつか大規模な事件が起きた。
俺が被害を最小限に抑えたこともある。
でもその時お前は、お前たちは、純粋に俺を応援して称えてくれていたじゃないか。
「海堂お前、マジで言ってんのか。俺だけじゃない、母さんまで犠牲になったんだぞ!! 人が死んでるんだぞ!!」
「そこんとこはぶっちゃけ可哀想だし、予想外の被害で申し訳ないが、文句なら実行犯に言えよ。俺はそこまで指示してない。へ、へへへ」
「お前……」
「なんだ? 怒るのか? 怒ってどうする。どういう理屈か知らねぇけど、お前はもはやゲームの中だけの存在。言っちまえば人間じゃねぇんだよ!! どうやって警察にチクるつもりだ? 証拠でも集められるのか? はっ!! いくら罪を告白しようが、ぜーんぜん怖くないね!! だって恒志、いまのお前は肉体のない無力な亡霊なんだからなぁ!!」
「殺す!!」
「お、おいスグル!! 早くしろ!!」
高速で海堂に接近し、剣を振る。
ギリギリ海堂の斧に防がれたが、たった一太刀でやつをふっ飛ばした。
「ぐえっ!!」
赤魔道士のマントを入手する条件の一つに、剣士から派生するジョブの熟練度をすべてMAXの10まで上げるというものがある。
当然剣士系統の全ジョブの熟練度ボーナスを持っていることになるため、パワーもスピードも他の追随を許さない。
「ひ、ひぃ!! リュウイ!! サポート入れ!!」
「う、うん!!」
リュウイがロングショットガンを出現させた。
そうかリュウイ、お前もそっち側なんだな。
俺より海堂を選ぶんだな。
「デス・ブラスト!!」
ビーム攻撃が俺を襲う。
「ジェミニ」
冷静に分身魔法で俺をもう一人生み出し、
「バリア」
そいつにが防御魔法で攻撃を防ぐ。
絶え間なく放たれ続けるビームを受け止めている間に、本体の俺が後ろから回り込んでリュウイに接近。
気づいていないリュウイを、剣で薙ぎ払う。
「へ? うわ!!」
まだ終わらない。
「グラビティ」
重力魔法で地面に押し付けて、
「エリミネーション」
リュウイの上空に巨大な魔法陣を出現させ、究極破壊魔法を発射した。
これでこいつは終わり……のはずだったが、直撃の寸前に海堂に抱きかかえられて救出されてしまった。
「ちょ、調子に乗んなよ!!」
海堂が切りかかってくる。
あいつが重剣士として鍛え上げたパワーによる猛攻を、片手であしらっていく。
「こいつ、こいつ!!」
「そんなものか……海堂!!」
「俺の方が、俺の方が!!」
「黙れ」
剣で振り払い、炎系魔法で海堂を焼く。
しょせんゲームで勝ったところで事態は進展しない。
それでも、そうだとしても、こいつだけは許せない。
「ぶっ殺してやる!! ドゥームズーー」
赤魔道士最強の奥義を放とうとしたその瞬間、俺の肩から赤いマントが消えた。
「なっ!?」
代わりに、海堂にマントが装着される。
海堂が、赤魔道士になった。
「くく、くくく、スグルめ、よくやってくれた。ようやく外部からアイテムを俺に譲渡したか」
「キサマ!!」
「へ、へへへ。やっぱつえぇな、コヲシ。二人がかりでも勝てないなんて……。けど、お前の究極の力は、いま俺の手の中にある!! 入手条件を満たさなくてもな!! 入手したら使えるんだよ!! これで俺も赤魔道士だ!!」
「この……」
「さっそく使わせてもらうぜ、ボルテスアロー!!」
雷の矢が俺を貫く。
痛い、それに体が痺れて、動けない!!
「ぐわ!!」
「無様だなぁ最強プレイヤーコヲシさんよぉ!! オラ!!」
剣で切られる。貫かれる!!
血はでないにしても、痛みはある。
いくらゲームの設定で痛覚が鈍くなっているとはいえ、まったくないわけじゃない。
「ずっとこうしてやりたかったぜ!! コヲシ!! 悔しかったら病院から抜け出して、直接殴りに来いよ!!」
「ち、ちくしょ」
負けてたまるか。
メニュー画面を出現させ、アイテム一覧を確認する。
アイテムポーチから適当な剣を選択し、装備。
具現化した剣を握り、海堂を睨む。
赤魔道士になったにしても、ジョブのまだ熟練度は1のはず。
ならば次の魔法を撃てるまでのクールタイムは15秒!!
さっきまでの俺のようにはいかない。
「海堂!!」
「ちっ、まだそんなもんあったのか」
「剣術の腕なら、俺が……え?」
その剣すらも、消えた。
おそらく、海堂のアイテムポーチに流れた。
外部からの操作によって。
「さぁ、全部奪ってやるぜ、恒志!!」
「ふざけるな……。リュウイ!!」
銃士の友人に助けを求める。
しかし、
「ご、ごめんコヲシくん。本当にごめん。ボク、海堂くんとの方が付き合いが長いから。お母さんのことは残念だけど……。でも、コヲシくんは死ななくて本当によかったね」
「こいつ!!」
「ボクを恨むのは、お門違いだからね」
他に武器はないか。
探ってみても、どんどんアイテムがすべて消えていく。
やめろ、今じゃここでのデータが、俺が俺であることを証明する証なんだ。
「くくく、せっかくだ。データそのものも完全に削除してやるよ。そうすりゃあ成仏できんだろ」
「かい……どう……。た、たかが嫉妬のために、そんな、そんなくだらないことのために……」
「50万と3年間、俺の貴重な金と時間が報われないなんて、許されねぇんだよ。こちとら、CBFに人生賭けてんだ。有名配信者になって、勝ち組になってやる」
「ざけんな……」
「安心しろよ、お前のだーいすきな篠宮しよりは、俺が幸せにしてやるから」
「しよりが……お前なんかを……」
「うるせぇな。亡霊は大人しく……成仏しやがれ!! スグル!! 完全に削除しろ!!」
「海堂おおおお!!!!」
最後の力を振り絞り、海堂に殴り掛かる。
次の瞬間、俺の視界も意識も真っ白に染まりーー。
【キャラクターを作成してください】
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※あとがき
たくさん課金したからってトップランカーになれるわけではありません。
環境に君臨し続ける最上級ジョブや武器、防具等は無課金でも手に入るからです。
鬼のような条件なので周回プレイが必須ですけど。
もちろん、ガチャ武器も強いですが。
ほとんどのプレイヤーは武器ガチャよりも、キャラガチャを回すことが多いです。
次の更新予定
VRMMOの世界に閉じ込められた最強ランカーのコピー、剥奪者のジョブで復讐の亡霊となる いくかいおう @ikuiku-kaiou
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