第6話 オバケヅタの除去作業
モリモリにツタが茂っている奥の方が魔力が濃い。
恐らくあそこに何かがある。
「よし、29号。ツタを除去しなさい」
「了解」
俺はさっそくツタを掴んで引きちぎる。
「お前が錬金術でやれば早いんじゃないのか」
「いえいえ、今回は29号の試験運用もかねています。どれだけ出来るか確かめなくては」
「でもどの道あのやり方だと」
後ろから会話が聞こえてくる。
なんでも良い、気にしない。俺は俺が命じられたことをやるだけだ。
しかし、動きにくい。いや、ものすごく動きにくい。千切っても千切ってもツタが絡みついてくる。
というか、気づけば体中がツタに絡めとられていた。
体が動かない。
「29号、オバケヅタは危害を加える外敵を拘束する特性があります。気をつけなさい」
「先に言って欲しかったな」
俺は体を形状変化させる。
両手足を刃に、体中からも刃をいくつも出現させてツタを切り裂いた。
「ほぉ。あんなことも出来るのか。ゴーレムよりずっと器用だな」
「それはもう、私が作ったホムンクルスですから」
後ろでシルヴェルトが得意げだった。しかし、どうでも良い。
このオバケヅタとかいう植物思ったより面倒だ。
このまま体を刃物に形状変化させて魔力の源まで進んで言っても良いが、かなり厄介と見た。
なにせ、切り裂いたところがもうふさがり始めている。すごい成長速度だ。
「29号、錬金術を使いなさい」
「どう使えば良いんだ?」
「それは自分で考えるのです」
ふふん、とシルヴェルト。課題を与えてやったと言わんばかり。かなり面倒だ。
しかし、錬金術か。
地面の材質を鋼に変化させても意味はないし。いや、そうか。
俺は地面に手を当てる。バチっと地面に火花が走る。それと同時に。
「うわぁああ!!!」
群衆が叫んだ。
それもそのはず。ツタのあるエリアが一気に吹き飛んだからだ。
大きな音と、爆炎と、土煙を巻き上げてオバケヅタは一掃された。
影も形もない。全部焼き払われてしまった。
「に、29号。普通に炎を起こして焼き払えば良かったんですよ!! 石畳の表面全部火薬に変えて吹き飛ばすやつがありますか!!!」
「ん? 間違いだったのか」
「間違いですよ!! 通りが木っ端みじんじゃないですか!!」
なるほど、確かに弱めの火薬だったとはいえ、通りは結構崩壊していた。
少し思い切りが良すぎたか。ファンタジー世界だと魔法で大爆発とか普通に起こすからこれくらいOKかと思ってしまった。
力加減と倫理観のバランスに気を付けなくては。
「直してください」
「了解だ」
俺は壁や地面に手を当てる。バチリと火花が散り、崩れた壁やはじけた石畳が元通りになっていく。錬金術は便利だ。
「それで、魔力の源はどれです?」
「ん? ああ、あれだ」
俺は魔力の濃い一角を指さす。
そこには本が置かれていた。
シルヴェルトはそれを手に取る。
「ペーパーバック小説ですか。確かに強い魔力がこもっています。しかし、新しい。つい最近のもののようです。なんでこんなものに魔力が」
シルヴェルトはいぶかしげに魔力の源、ペーパーバック小説を手に取る。ペーパーバックといえば前世の世界だと、外国の安価な小説本だ。この世界でもそうなのだろう。
「そういうものにも魔力はこもるものなのか?」
「いえ、魔力とは古い道具や使い込まれた武器、精霊が生んだ神器などに宿ります。こんなつい最近出来たものに魔力が宿るとなると誰かが人為的に宿らせたとしか思えません」
「なんでそんなことを?」
エレナが聞く。
「さぁ、皆目見当がつきません。そもそも、そんなペーパーバックをどうしてこんなところに置いていくのか」
難しい顔でペーパーバックを睨むシルヴェルト。その間に俺は付近の修復を終わらせた。
「終わったぞ」
「ん? ああ、元通りですね。これからは街中でこういうことはしないように」
「了解だ」
「ペーパーバックのことは悩んでも仕方ありません。後は任せますよエレナ。この謎解きこそ冒険者ギルドの仕事でしょう」
「その通りだな。請け負おう。しかし助かった。原因が分からないものに無闇に手出しは出来なかったからな。あっという間に片付いたし」
「また何かあったら呼んでください。ギルドは報酬が良いので助かります」
「ああ、頼りにしてるよ。そら、みんな。現場検証だ」
エレナがそう言うと他の冒険者たちもワラワラと集まっていく。
俺たちはその横を通って現場を後にした。
「これも工房の仕事なのか?」
「うーん、本来の錬金術師の仕事とは少し違うんですけど。商売のための人間関係の構築を図るうちにこんな便利屋みたいな仕事もするようになったんですよね」
なるほど、やっぱり錬金術師の仕事ではないのか。この世界の錬金術師は万事屋の同義語なのかと心配になっていた。
だが、この工房ではこういう仕事も度々あるのだろう。
小さい街だ。シルヴェルトは魔法や魔物の知識が豊富なのだろうし、それ関係で知識を求められると答えずにはいられないのか。
だが、確かにそういったやり取りが人間関係を育んでいくのかもしれない。
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