第2話 性能試験
「感覚、良好。魔力循環、良好、体組織問題なし」
シルヴェルトは俺に謎の機器を取り付け、手元のメーターのようなものを見ながら紙にチェックを入れていく。
「どうやら、正常に稼働しているようですね。29号」
「それは良かった」
俺は答える。
鏡に映った俺の姿は結構ガタイの良い銀髪の男だった。
生前の面影はまるでない。
改めて転生したのを実感する。
「では、稼働試験を行いましょう」
「稼働試験?」
「そうです。あなたの性能を確かめなくては」
なんなのかまるで見当もつかない。
まぁ、人工的に製造された生命なのだから、機械よろしく性能を確認することは必要なのか。
「表へ出ます。ついてきてください」
「お、おう」
体は馴染んで問題なく動くようになっていた。
目覚めた直後で寝ぼけているような状態だったのだろう。
謎の実験器具がたくさん置かれた部屋をシルヴェルトに従って出る。
どうやら地下室だったのか。
石造りの階段を上り、上へと上がる。
「ちなみにあなたの主観として、体に変調などはありますか?」
歩きながらシルヴェルトは聞く。
「いや、特に何も」
「よろしい」
今のところ体に異常は感じられない。ホムンクルスになったのは初めてだから人間の感覚でしかないが。
そして、石造りの階段を上ると陽光が差し込む部屋へと出た。
「ここが工房です。ここで商品を作っています」
「ここが工房。じゃあ、今いた下の部屋は?」
「あそこは実験室です。人目をはばかる実験を行う部屋です」
「自分で言うのか」
つまり俺は人目をはばかる実験の産物だと言うことか。まぁ、人体錬成みたいなものだしそういうものか。
部屋の中にはコポコポと湯気をたてるフラスコや、何かが煮える大窯などがあり。部屋の壁にはずらりと棚が並んでいる。たくさんの書物、それから引き出し。床には魔法陣もある。
結構広い部屋のはずだが随分狭く感じた。
「表へ出ますよ。そこであなたの性能を確かめます」
「性能かぁ」
言われるままにシルヴェルトと共に外へ出る。
出たのは裏口だろう。
そこからの景色は草原だった。
一面に緑の草原が広がり、その向こうに岬があって、断崖の下に海が広がっている。
爽やかな風が俺の頬を撫でた。
「良い景色だな」
俺は呟く。絵本とか、旅行雑誌のパンフレットにあるような良い景色だ。
「おや、あなたにそんな感性は付けなかったはずですが」
「そうなのか。良く分からないけど」
「ふぅむ。誤作動のようなものでしょうか。調べる必要はありそうですね」
シルヴェルトはぶつぶつ言っている。
後ろを見れば、街が広がっていた。しかし、高い建物はない。
ファンタジー的にはそれほど大きな街でもなさそうな気がする。
「なんです?」
「割とこじんまりしたところだな」
「当たり前です。そういう場所を選んで住んだんですから。ここは辺境の街ザイツ。この国でも知らない人の方が多いような街です。ですが、良い人ばかりで住みやすいですよ。と、そんなことをホムンクルスのあなたに言っても仕方ないですか」
「いや、なんとなく分かった」
住みやすい田舎みたいな感じか。
なんだって、そんなところで錬金術師が住んでるんだろう。
何も分からない。
「とにかく、性能試験を行います。まずは腕を変形させて」
「へ、変形」
「出来るはずです。そうですね、腕が刃になっているところをイメージしてください」
言われるままに腕が刃物になっているところをイメージする。
すると、
「お、おお」
右腕が変形し、肘から先がひとつの刃物となって形を変えた。
金属の刃、それが俺の腕になっている。
「よろしい。体組織の変性は問題ないようですね。次は錬金術です。足元の石を鋼に変えてください」
「石を鋼に?」
言われるままに足元に転がっている石を手に取る。
「それもイメージです。あなたは錬金術の詳しい仕組みを理解しなくても錬金術を使えるように調整してあります。やってみてください」
俺はやはり言われるままに握った石が固い鋼になっているところをイメージする。
すると、手元にバチっと火花が爆ぜた。
見れば、石はあっという間に鋼に姿を変えていた。
「よろしい。体内の錬成陣もうまく機能しているようですね。性能試験は上々です。あなたにはまだまだ機能を付属しています。おいおい、使える機能も増えていくでしょう」
「合格ってことで良いのか?」
「ええ、あなたは私の工房の店番にふさわしい性能をしています」
「やっぱり役割は店番なのか」
「メインが店番というだけです。工房の助手やお使いもやってもらいますよ」
「了解」
そんなこんなで俺のホムンクルスライフがスタートするらしかった。
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