蒼の錬金術師とホムンクルス-美少女錬金術師のホムンクルスに転生して工房を切り盛りする-

第1話 目覚めと瓶の中

「ん、朝か」



 俺は目を覚ました。


 いつものように、眠りから覚醒した。


 眠りから起きたということは朝だということだ。


 しかし、目に入ったのは知らない天井だった。


 暗い石の天井。


 いつものアパートの天井ではない。俺が会社から帰ってただ寝て、また会社に行って、休日もやっぱり寝るだけのアパートの天井ではない。



「起きましたか」



 声がした。


 そちらに目を向ける。


 というか、そもそも俺はベッドに寝ていなかった。


 なんだろう。大きなガラスの水槽みたいなところに入って、緑の水の中から外を見ていたのだ。


 そして、天井から視線を下ろして見ればそこには青色の長い髪の少女が居た。黒いズボンに黒いタートルネックに黒いジャケット。服装は黒一色だ。


 外国人だろうか。


 なんだ? なんで俺はこんなガラス瓶の中に入ってこのかわいい女の子に眺められているんだ。というか、俺はいわゆる全裸だった。急に恥ずかしくなってきた。



「だれだ?」



 俺は口にする。ゴボリ、と口から空気が漏れた。


 なんで俺はこんな状況になっているんだ。


 というか会社は。


 そこで、閃光のように記憶が蘇った。


 そうだ、俺は死んだのだ。


 ブラック企業でボロ雑巾みたいに働かされて、とうとう仕事中に過労でご臨終したのだ。


 深夜3時、パソコンに向かって終わるはずのない書類の山と戦いながら、眠るように安らかに息を引き取ったのだ。


 なんて、クソみたいな死に方だろうか。自分で自分が哀れだ。カスみたいな一生だった。


 ということはなにか。もしかして、これは異世界転生というやつか。


 それならこの突拍子のない状況にも説明がつく。


 なるほど、こういう感じなのか。それは分かったが、俺は何に転生したんだ。職業はなんだ。なんでガラス瓶に閉じ込められているんだ。



「意識はありますか? あるなら右手を上げてください」



 少女の言葉に答えて俺は右手を上げた。



「よろしい。自分が何者か分かりますか?」



 俺は首を横に振る。



「なるほど、意識に介入し切れませんでしたか。これは改良の余地ありですね」



 少女はぶつぶつ言っている。


 俺にはいまだに状況が分からない。



「では改めて。あなたは私、錬金術師シルヴェルト・アークロイツが作ったホムンクルスです。検体番号は29。あなたを29号と呼称します。良いですね?」



 ホムンクルス。なんてことだ。俺が転生したのはホムンクルスなのか。ということは人間じゃないのか。いや、人間と言えば人間なのか。ただ、なんか剣聖とか大魔法使いとか、心から喜べる感じではない気がする。どうだろう、ホムンクルス。



「今から培養槽からあなたを出します」



 少女はそう言うと手元のレバーをガコンと動かす。途端、俺の入ったガラス瓶の緑の液体が排水されていった。


 完全に排水されるとカチリと音がし、ガラス瓶が半分に開いた。


 俺はそこからえっちらおっちら降りる。


 足腰に力が入らない。


 目覚めたばかりだからなのか。



「良く起きてくれました29号」



 少女が俺の前に立ち言った。



「あなたには私に協力してもらいます」


「目的があるのか。復讐か?」



 ホムンクルスまで作ってすることならそんなところだろうか。マンガとかアニメ的な感じなら。


 しかし、少女は言った。



「いえ、店番です」


「店番かぁ」



 俺は答えた。

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