三。

「さすが霊剣あらたか……ここまでの力、とは……」

 マトリは、あやかの霊剣あらたかの強さに感心しながら言った……。

 あやかは九十九神を、その自身のつくった霊剣あらたかで、倒した……。

 地面に這いつくばる九十九神に、マトリは言った。

「この役立たず! おまえは、これだけの力を持っていながら、あっさりやられるとは……。ゲームでレベルが99あるのに、あっさりボスにやられるのと同じだぞ」

 九十九神は言った……。

「やっとこいつのあつかう死霊からの憑依をとく事ができた……。礼を言うぞ、女よ。これで我は自由だ」

 九十九神は、あやかに言った。

 今し方、九十九神の中から出てきた無数の人玉が、上空に浮遊していた……。

 あやかは言った…。

「確かに今の攻撃で、あなたの中から人玉が抜けていったわね……。マトリに、操られていたの…?」

「ああ……」

「そう……」

 九十九神は言った…。

「確かに我ら悪霊は…我らの言動や行動…この姿からも…忌み嫌われたりしていて……。その事で…人里で暮らす事も…難しいときもある……。だが……そんな我らの事でも…存在を否定しないでくれるものも居る……」

「……」

 あやかは、九十九神の話を黙って聴いている……。

「いいにしろ…我らの力を悪用しようとするものだとしても…だな……」

 九十九神は、また立ち上がり、

「だからと言って…ーー」

 キッ、と九十九神が、マトリを睨んだ。

「おー、怖」

 マトリは笑っていた。

「我らはキサマら人間達の、道具ではっ、ないのだ!!」

 九十九神がマトリに迫っていった!!

 マトリは相変わらず笑いながら、

「何を言っているんだい? キミは……」

 悪魔を召喚した!!!

「!!? 悪魔!! しかもっ、六体も!!」

 あやかは言った……。

「火蟻の悪魔、サニー……」

 マトリが悪魔の一体に指示をだした……。

「ええ……」

 と次の瞬間…ーー


 ボオオオオオオ!!!


 サニーの口から火炎が放射された!!!

「九十九神っ」

 あやかは叫んだ!

「ぐおおおおおお」

 九十九神は、サニーの火炎放射をその身に受けて、悶えた……。

「気をしっかり持って!」

 あやかは急いで九十九神に駆け寄り、自分の上着を脱いで、九十九神に点いたサニーの火を消そうと試みた。

 その光景を見ながらマトリは言った。

「キミ達悪霊は、とっくにこの世での肉体を失い、未練から、この世に存在する事にしがみついて……もうこの世での存在ではなくなっている分際が……。せっかく九十九神にまでなった悪霊なのに……もったいないですね……」

 マトリは残念そうに言いながら、

「キミにあげた私の死霊達…返してもらいますよ……」

 九十九神から離れた死霊達を、自分の中へと移動させた……。

「もう大丈夫ね」

 九十九神に点いた火を消したあやかは言った…。

「それでも…この人達にも……わたし達と同じように、“心”がある…」

 あやかは九十九神にほほえんで言った。

「ちゃんとここに存在していて、生きているよ」

「……」

 九十九神は無言のまま……。

 あやかは話を続けた……。

「否定するのは簡単よ……。誰にでもできる事だと…わたしは思うもの……。だけど……他者を認めるという事は…難しいわね……。なかなかできる事じゃないと、わたしは思うわ……」

(こいつ……)

 あやかの話に、マトリは思った……。

「人それぞれ、いろいろある……。だけど…自分の事は、基本自分でどうにかしていかなきゃ……。他者に頼るな…とは言えない……。だけど……他者に頼ってばかりもいられない……。誰にだって、その、他の誰でもない自分の事であり……自分の人生なんだから……」


 だけど…きっと誰かが、みていてくれるから……


 あやかは言った…。

「悪魔が出てきたなんて…このままじゃ…皆やられるかもしれない……。それでもわたしは…人の命は奪いたくはないから……」

 あやかは九十九神に言った……。

「あなたは…どうするの……?」

 九十九神は、こたえた……。

「ああ、我もたたかう。ありがとう、生きていると言ってくれて……嬉しかった……」

 あやかと九十九神は、マトリ達に向き直った……。

 そして……


 だからわたしは…たたかい続ける…ーー

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『Belief ーー ビリーフ 信念 ーー』 クールペンギン @cool-penguin6

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