第3話

 「図書館、ですか?」


 「そう。何冊かウチに本を譲ってくれるらしくてね。須磨君に頼めないかなって」



昼休み、図書委員の顧問に呼ばれた海人は、近くの図書館から譲ってもらう本を受け取りに行って欲しいと頼まれていた。



 「他の子に聞いてみたんだけど、何かと理由をつけて断られてね。一人しか決まってなくて」


 「その一人じゃダメなんですか?」


 「結構な量らしくて…もう一人居ないときついかも。引き受けてくれたのは女の子だしね」


 「……ちなみに、その引き受けた女の子って…?」


 「城崎さんだけど?」


 「行きます!行かせていただきます!」



海人は先生に食い気味に言った。



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 「海人ー帰るよー」


 「なあ慶!」



放課後になり、いつも通り慶が海人を呼びに来る。

すると、慶と仲のいい男子が慶を呼び止めた。



 「何?清志」



慶を呼び止めた男子は守口 清志もりぐち きよし

イケてるルックスにノリの良さ、バスケ部所属でクラスでいつも中心に居るような生徒。

陽キャが具現化したような男である。

そんな生徒達から大人気の清志の呼びかけを慶は呆れたように返す。



 「何じゃねえって、今日こそカラオケ行こうぜ!あんな奴放っといてさ!」


 「えー!私歌うの苦手なんだけどー」


 「そんなの関係ねえって!居てくれるだけでいいからさ!な、お前ら!」



清志が後ろに居る男子生徒達にそう言うと、皆が頷く。

周りに居た女子達も「行こうよ!」と言って慶の腕を引っ張っている。

これはある種チャンスだと考え、海人は慶に近づいて言う。



 「今日は委員会の仕事があるから、友達と遊んで来いよ」


 「え?そうなの?そんな事言ってたっけ?」


 「言うタイミングなかったからな。そういう事だから、カラオケでも何でも行ってこいよ」


 「まあ、そういう事なら……」



慶が行く雰囲気になると、男子生徒達の顔色が明らかに変わった。



 「じゃ、楽しんでこいよー」



海人はそれ以上は何も言わず、その場を後にした。



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 「どんな本が貰えるか、楽しみですね!須磨君」


 「そ、そうだね、城崎さん」



あの後、海人は和泉と正面玄関で待ち合わせをし、二人で図書館に向かう道中、本好きの和泉にとって楽園である図書館が楽しみで少しテンションの高い和泉を見れて、海人の顔が緩む。

目的の図書館に到着し、司書さんに事情を説明、場所まで案内され、好きな本を何冊か持って行ってくれと頼まれた。

海人と和泉は、各々がこれだと思った本を机に並べて見たのだが、



 「……見事に同じですね」


 「……ですね」



好きなジャンルも読む本も同じ二人が持ってきた本は、どれも似たような内容の本ばかりで、新規追加という割にはジャンルが偏りすぎている。



 「ふふっ、こんなに似た物ばかり集めちゃうなんて、気が合いますね私達」



そう言う和泉の笑顔に、海人の心臓が跳ねる。



 「そ、そうだな!」

 (好きな子にそんな事言われたら、意識しちまうって!)



和泉は何とも思っていないだろうが、気が合うという言葉は海人にとっては動揺するのに十分で、返す言葉もぎこちなくなってしまった。


その後は、二人でできるだけジャンルをバラつかせ、紙袋3つ分になるくらいの本を貰えた。

海人が2つ、和泉が1つ手に持ち図書館を後にする。



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 「思ったより多くなっちゃいましたね…」


 「だな。本好きの俺達が行くべきところではなかった」



欲しいものをなるべく厳選したつもりだったが、それでもかなりの量で、学校まで持ち帰るのに2人ともかなりの労力を使っていた。

そんな時、ふと甘い匂いが漂う。

周りを見渡すと、一台のキッチンカーが停まっていて、クレープを売っていた。



 「……美味しそう」



和泉がボソッと呟く。

それを聞いた海人は、ふっと笑みをこぼす。



 「少し、休憩していくか」


 「でも、早く戻って仕事を…」


 「休憩も仕事の内ってことで」


 「……そうですね。少しだけ」



学校までは後少しだが、甘い匂いに釣られた2人はクレープを買って小休憩をする事にする。

海人は普通のチョコバナナ、和泉は苺とチョコと生クリームにバニラアイスがトッピングされたものを頼んだ。

しばらく待ち、クレープを受け取って、近くの簡易ベンチに腰を落とす。



 「……なんだかすみません、こんなに沢山盛り付けて…」


 「いや、別にいいと思うけど?」


 「本当ですか!?く、食いしん坊だとか思ってませんか!?」


 「ははっ!そんな事思わないって」


 「わ、笑わないでください!こっちは真剣なんです!」


 「ごめんごめん、本当に思わないって!むしろ、よく食べる子は可愛─」



そこで海人の言葉が止まる。

和泉は不思議そうに首を傾げている。



 「……あ、アイスが溶けないうちに食べるか!」


 「あ、そうですね」



何とか話を逸らして、海人も和泉に続きクレープを口にする。

ベンチに並んで2人でクレープを食べる。

そんなシチュエーションに2人は、



 (……なんか、デートみたいだな)

 (……なんだか、デートみたいです)



そんな事を考え、勝手に顔を赤くする。



 (そんな風に思ってるの、俺だけだろうけど)

 (こんな風に考えてるのは、私だけでしょうけど)



 「……美味しいな、クレープ」


 「……そうですね」



そんな淡白な会話をしながらクレープを食べ進める。

口に広がるクレープの甘さが、いつにも増して甘く感じた。

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