第5話
隣の部屋のドアを開ける。 ピンク色の壁紙。棚には無数のぬいぐるみが並び、そのすべてが、ベッドで眠る「獲物」を監視しているようだった。 光はデイパックから柳刃包丁を抜いた。鋼の刃が、薄暗い室内で冷たく光る。 左手で毛布の上から子供の口と鼻を圧し潰した。子供が跳ね上がる。光はその動きを予見していたかのように、右手の包丁を垂直に、力一杯振り下ろした。 ブスリ、という肉を断つ音がした。 シーツに鮮血が同心円状に広がる。光は包丁を引き抜き、さらに二度、三度と刃を突き立てた。返り血が光の頬に熱く飛び散り、目の中に入った。光は瞬きを一つせず、子供が動かなくなるのを、無機質な視線で見守った。 「……」 光の口が動いたが、声は出なかった。包丁の柄は、すでに子供の血でぬるぬると滑り始めていた。
廊下に出た瞬間、突き当たりの主寝室のドアが開いた。 女が立っていた。寝ぼけた顔が、目の前の血塗れの影を捉える。女の口が大きく開こうとした。 光は弾かれたように跳躍し、左手で女の顎を突き上げるようにして口を封じた。右手の柳刃を、女の胸骨の隙間を狙って突き出す。 しかし、血糊のせいで手が滑った。 刃先が女の肋骨に当たり、光の右手の指が、自分自身の刃の上を滑り降りた。 光の掌から、鮮血が噴き出した。 女は声も出さず、膝から崩れ落ちた。光は激痛に顔を歪める代わりに、低い呻き声を上げ、倒れた女の背中に何度も包丁を叩き込んだ。女のワンピースが赤く染まり、床に血の池が形成されていく。
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