第2話 アフロやない!ストレートパーマや!

春一番が吹くと、道端に咲いていた小さな花びらが一斉に散り、風に舞う。

まだ寒い季節だが、その光景はどこか心を浮き立たせた。


 俺!桜井蓮13歳。


 今日ストレートパーマをかけるんや。


美容室の扉を開けると、店内で待っていた知人の美容師さんが「蓮くん、おめでとうな」と言ってくれた。

美容師さんに案内されて、鏡のある席に座るや否や案内してくれた美容師に連絡が入り、僕から一旦離れていった。

代わりに奥から、子供頃からお世話になっている、ミツエおばちゃんが出てくる。


 ミツエおばちゃんは、御年86歳。


腰の曲ってしまった背の低い老婆で、最近耳が遠くなっている。

「蓮くん、久しぶりやね、中学入学やて?」

と言いながら僕の頭を触り始めた。


 僕は、この天然パーマの頭が嫌いやねん。




このクルクル寝グセみたいな髪型のせいで、何時しか皆からのあだなは…

「アフロ!」とか言われるようになったんや。

「お前ほんま頭だけ宇宙人やんww」とか!!


(その時はかなり凹んだよ)


 そう呼ばれるだけで笑われてんもん……恥ずかしいったらありゃしない! 

 この天然パーマは、遺伝によるものが大きいらしいんだけど……。

 母曰く父方のおじいちゃんがこんな感じだったそうだからその影響が強いと思うわ……。 


 天パは、めんどくさいぃぃぃぃ!

 雨の日は、まとまらへんし!

 暑い日に蒸れて大変やねん!


 た……だから早くスッキリさせてしまいたい。

「ミツエおばちゃん、まっすぐにしてや!」

「なんやて?」

「だ・か・ら・な! ストレートパーマ! やで!」

ミツエおばちゃんは不思議そうに首を傾げる。


大丈夫やんな?と思いながら。

ミツエおばちゃんは、施術を始める。


これで、僕はアフロの桜井蓮やなくて、ストレート頭の普通の男の子になれるんや!

さらっと髪を靡かせられる!


そんな淡い期待を抱きながら一時間後に出来上がりを迎えた訳だけど……?


あれれぇ〜っ!? 

蓮「イヤ~ッ!!! もう嫌やぁァー!!」

出来上がる前より、クルクルになっていた。 

そこに、美容師さんが帰って来て、慌てる。 

「ミツエおばちゃん!パーマやないよ!ストレートパーマやで!」

 と言うのだが、ミツエおばちゃんは何も聞いてなかったみたい。




「どうすんねんこれ!!!!!」 




二日後、中学の入学式なんやけど……。

俺は、魂が抜けた。

まさしく虚脱状態やったわ。orz


虚脱状態の俺は、美容室を出る。

美容師の人は、平謝りしてたが何も言えなかった……。

ただただ、泣きそうな顔になってましたわ……。



「俺なんか悪いことしたんかいぃー!!!」


思いながらもトボトボ歩き続けるも。

ショックすぎて立ち直れない……orz


暫く歩いた所にあったコンビニに入る。

コンビニで、少年少女二人組がレジで会計をしていた。



少年が蓮を見るなり笑う。

「蓮、何そのカッコwwwブホォwww」

はぁ……、と肩を落とすと少年は更に面白おかしく笑うのだ。

「おもろ過ぎて腹いてえー!あっハハンハッン!!」

それを見た少女は不機嫌になるのであった……。

蓮を笑いこけていた少年は山田優13歳。

こいつは、俺の幼稚からの幼なじみ。

そして、天パではなく!ストレート髪や!

ちなみに、コイツにも彼女持ちというチート野郎でもある。 

そして、横にいる少女は山本華13歳。

優の彼女だ。 

髪は優と一緒で、ストレートや! 

腰まで髪があって、可愛いて評判。 


僕を見て最近、機嫌がやるなるんや!


蓮は、二人の邪魔をする気はなかったのであるが、

タイミングが最悪で店員さんの目の前で並んでいた為二人分のお金を払っている最中だった。 


蓮「しゃーないやろ!これはパーマかけたくてかけたんちがうんや!」

って反論するが、優はお腹を抑え苦しんでいるので相手にされなかったのが悔しい……。


「ミツエおばちゃんのアホ〜ぉ!!!」


俺!桜井蓮13歳 

これが、中学入学2日前の出来事だ。

2日後、俺は吉田秋という天敵及び初恋相手と出会う。

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