第5話 発覚する過去

「これはワシらドワーフからの贈り物じゃ」


 ヴォルフが宝石箱を取り出す。


「あら、それはそれは……」


 デリルは丁寧に箱を受け取り、開けてみた。「うわっ、すごい指輪じゃない!」


「わしらは別に武器だけ作っておる訳では無いのでな。集落の指輪職人に作らせたんじゃ」


「これは……ルビー?」


 デリルは真っ赤に輝く宝石を見て訪ねる。指輪そのものも素晴らしい細工が施されているが、台座にはめ込まれたルビーはさらに目を引く。


「そうじゃ! デリルさんに相応しい、真紅に輝く『紅蓮ぐれんのルビー』じゃよ」


 ヴォルフはどうだと言わんばかりに胸を張る。ヴォルフの集落は火の神を信奉しており、赤が一番尊い色とされている。ヴォルフたちにとってルビーは最高の贈り物なのである。


「紅蓮のルビー?! そいつはかなりレアな代物じゃないか」


 近くにいたアストラがぎょっとした表情を浮かべる。通常のルビーよりも魔力を吸収しやすく、魔道士には垂涎すいぜんの宝石である。


「まぁ、そんな凄いもの、本当に貰っていいの?」


「いいんじゃ、デリルさん。その代わり、またちょくちょく遊びに来てくだされ」


 ヴォルフは笑顔で言う。


「そう? ……じゃあ遠慮なく貰っておくわ」


 デリルはそう言って指輪を嵌めてみた。右手の中指にぴったりである。「凄いわね、まるで採寸したかのようにぴったりだわ!」


「ははは、それは紅蓮のルビーがデリルさんを気に入った証拠じゃ。大事にしてくだされよ」


「もちろんよ、大切に使わせてもらうわ」


 デリルは嬉しそうに指輪を眺めた。


「デリル、これは聖都からの贈り物だ」


 アストラがどこからともなく三角帽子を取り出した。いかにも魔女がかぶりそうな真っ黒な三角帽子である。


「あら、オータムちゃんにも気を使わせちゃったわね」


 デリルは帽子を受け取り、さっそくかぶってみた。「うわっ、何これ? 物凄い魔力を感じるわ!」


「見ての通り、魔女の三角帽子だ。お前のために聖女様が作らせたんだぞ、感謝しろよ」


 なぜか恩着せがましいアストラ。


「ふふ、かわいい妹弟子のために世界各地から素材を集めて来たのは誰だったかしらね」


 オータムが冷やかすようにアストラに言う。


「ご、ごほん。そ、それはだな……。い、遺跡発掘のついでだ、ついで。そんな大した素材は使ってない」


 アストラが慌てて言い訳をする。


「アシュラスパイダーの巣窟そうくつまで行ってきたのに?」


「しっ!」


 アストラが顔をしかめてオータムを止める。


「え? アシュラスパイダーの巣窟ですって? あんた、二十年前に片目を失ったあんな危険な……」


 デリルは言いながらハッと思い出す。そう言えば二十年前もアストラは餞別せんべつに魔女の帽子をくれた。「もしかしてあんたの目、私のせいで……」


「バ、バカなことを言うな! わたしが未熟だっただけだ。お前は全く関係ない」


 アストラは困り顔で、今にも泣き出しそうなデリルに言い聞かせるように言う。「めでたい席だ、昔の事は忘れて楽しくいこうではないか」


 アストラはそう言ってグラスを手に取りグイッとあおった。思いのほかキツかったのか目を白黒させたアストラを見てデリルも思わずクスリと笑う。


「良いわね、デリル。素敵な兄弟子に恵まれて」


 オータムがうらやましそうに微笑む。いつもなら全力で否定するところだが今日ばかりはデリルにもそう思えた。




「だからなんであんなところで降りたんだよ!」


 玄関の方から女性の怒鳴り声が響き渡る。どうやらエリザたちがやって来たらしい。デリルとネロ、その他エリザを知る者たちは皆そう思った。


「王都の上空を臥竜の姿で飛べるものか! 大騒ぎになるわい!」


 ヴェラが言い返す。


「ヴェラの言う通りだよ。エリザ、落ち着いて」


 アルがなだめるが、


「アル、てめぇ、ヴェラの味方すんのか!」


 エリザが今度はアルに突っかかった。どうやら空腹なのに長く歩かされてご機嫌斜めなようだ。


「アル! 久しぶりだね」


 ペディウスが小走りで駆け寄る。


「ペディさん! お久しぶりです」


 アルは嬉しそうにペディウスを迎える。


「エリザさん、あそこにオードブルが置いてあるよ」


 ペディウスが言うとエリザが目を輝かせる。


「おおっ、大ご馳走じゃねぇか!」


 エリザは他の物には目もくれず食べ物のある場所へ飛んで行った。


「やれやれ、やっとうるさいのがいなくなったわい」


 ヴェラがうんざりした表情で言う。「アル、旧交を温めるのも大事だが、まずはデリルに挨拶じゃ」


「ああ、デリルさんならあそこだよ」


 ペディウスがアルとヴェラを案内する。


「アルくん、ヴェラ、よく来てくれたわね」


 デリルが満面の笑みで二人を歓待する。


「すまんな、デリル。エリザは先に食事に行ったわい」


 ヴェラが申し訳無さそうに言う。まるで保護者である。


「いいのよ、お腹に何か入れれば少しは大人しくなるでしょ」


 デリルは気にしていない様子でヴェラに言う。


「あっ、そうじゃ! エリザさんに渡すもんがあるんじゃ!」


 ゲレオンは思い出したようにそう言った。






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【デリ豊シリーズ・過去作はこちら】 ※第3部からでも楽しめます!


◆第一部:目覚めし竜と勇者の末裔 https://kakuyomu.jp/works/16817330652185609155


◆第二部:復活の魔王と隻眼の魔導士 https://kakuyomu.jp/works/16818093083366171518

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