第4話 お祝いの品

「ネロくん? そう言えばネロくんはどこ行ったのかしら?」


 デリルは辺りを見渡した。いつもならデリルのそばにくっついているのに……。一緒になってマリーたちも辺りを見回す。


「あ、いた。なんかひょろっとした人と話してる」


 すえのサリーがネロを指差す。


「ああ、お友達のノッポくんだわ」


 デリルがマリーたちに説明する。ノッポは以前、ネロが弓術大会きゅうじゅつたいかいに出場した時に知り合ったエルフの若者である。後で知った事だが、ノッポの父親は、ネロに弓矢を教えたエルフの弓隊長ヴァイオレットだった。


「そっか、もう班長になったんだ」


 ネロは感心したように言う。


「まぁな、愚連隊の頃からそういう役回りをさせられやすいんだよ」


 ノッポは恥ずかしそうにぽりぽりと頭をく。


「おい、フェルナス」


 ノッポに向かって赤紫色の髪をしたエルフが言う。ノッポの父ヴァイオレットである。遺跡調査しているフレッド博士も一緒である。


「あっ、ヴァイオレットさん。お久しぶりです!」


 ネロは嬉しそうにヴァイオレットに挨拶をする。


「ネロくん! フェルナスから聞いたぞ、王都の弓術大会で優勝したそうだな!」


 ヴァイオレットが我が事のように嬉しそうに言う。「おめでとう。君ならやると信じてたよ。あっ、デリルさん! それじゃまたな。おーい、デリルさーん!」


 ヴァイオレットはフレッドと共に落ち着きなくデリルの方へ歩いていった。


「フェルナス?」


 取り残されたノッポにネロが訊く。


「まぁな、恥ずかしいったらないぜ。よりによってエルフ界に伝わる伝説の弓使いと同じ名前なんてな」


 ノッポがニット帽の上から激しく頭を掻く。どうやら王都で伝説の勇者と同じ『フィッツ』と名付けられるようなもんらしい。


「大丈夫だよ、ノッポなら名前に恥じないエルフになれるさ」


 ネロは励ますようにノッポに言った。


「へっ、ありがとよ」


 ノッポは照れ臭そうにネロの頭をわしわしと撫でた。


 ネロとノッポがデリルの元に行くと、ヴァイオレットとフレッドが先に話の輪の中に入っていた。


「デリルさん、コイツはプレゼントじゃ」


 フレッドは背中に背負っていた長い棒のような物をデリルに差し出した。


「あら、かえって申し訳ないわね」


 デリルはフレッドのプレゼントを受け取り、その場で袋を開けてみる。「まぁ! これは……なに?」


「先日、遺跡で発見した杖じゃ」


「まぁ、そんな貴重な品、貰って良いのかしら」


 デリルが戸惑っていると、


「それがじゃな、後で分かったんじゃが、その遺跡はエルフののこしたものでは無かったのじゃ」


 フレッドが残念そうに言う。「杖と言ったが、実際には素材も使い方も謎のままじゃ」


「木にも見えるけど随分軽いわね。石や金属ではなさそうだわ」


 デリルは杖をしげしげと見つめる。床に着けるとデリルの身長くらいの長さだと分かる。一般的な杖によく使われる樫の木ならばもっとずっしりと重量を感じるはずだが、この杖は随分と軽かった。


「不思議な素材じゃ。いつ頃の文明の品か興味はあるのじゃが……」


 フレッドは聖都から研究費を貰って各地の遺跡を調査している。しかし、エルフの遺跡ではないと分かった時点で調査は打ち切りとなる。聖都も無限の資金がある訳ではないのだ。


「軽いけど丈夫そうね、箒代ほうきがわりに使おうかしら」


 デリルは杖をまたいでみた。ちょうど良い塩梅あんばいである。「うん、良いわね。気に入ったわ。ありがとう、博士」


「なぁに、あんたに預けておけばいざという時にまた借りられるじゃろ?」


 フレッドは悪戯いたずらっぽく笑った。


「あっ、ペディくん!」


 デリルは大広間に入ってきた青年を見て笑顔で手を振る。ボディガードと思われる屈強な男を連れた帝都の皇帝ペディウスである。


「デリルさん、お招きありがとう」


 ペディウスは無邪気にデリルに近づく。「メインゲートも特に問題無く通過できたよ」


 デリルが事前に王宮や管理局に連絡していたため、若干物々しくはあったが群衆がごった返す事もなくスムーズに入都にゅうとできたのである。


「それはよかったわ、ペディくんが一番心配だったのよ」


 デリルはホッとした表情を浮かべた。


「アルは来てないの?」


 ペディウスが訪ねる。先日の騒ぎで無二の親友となった伝説の勇者フィッツの嫡男ちゃくなんである。ついでに言えばマリーの息子で、リリー、メリー、サリーの弟でもある。


「ああ、そう言えばまだ見てないわね」


 デリルはキョロキョロと見回した。


「デリルさんや、このたびはお招きありがとう」


 近づいて来たのはドワーフの集落の長ヴォルフである。デリルたちは以前、ボロボロにちた竜殺しの剣を修復する為に集落を訪ねた事があるのだ。


「ヴォルフさん、それにゲレオンさんも」


 デリルは懐かしそうに二人のドワーフに手を振る。「まぁ、ラウラも来たのね」


 ゲレオンの弟子であるラウラもおずおずとした様子でゲレオンの後ろに立っていた。


「この度はこのような盛大な会にお招き頂き、大変恐縮至極きょうしゅくしごくにございます」


 ラウラはたどたどしく挨拶をする。


「まっ、そんなにしゃっちょこばらないでよ。一緒に戦った仲じゃない」


 デリルは緊張を解こうと笑顔で言うが、ラウラには逆効果だった。巨大なアリジゴクを伝説級の魔法で粉々に飛び散らせたのを目の当たりにしたラウラは、デリルに対して強い恐怖心を抱いていたのだ。


「デリルさん、相変わらずの別嬪べっぴんさんじゃな。ドレスもよく似合っておるぞい」


 ゲレオンがデレデレした顔でデリルに言う。この日のために誂えた、孔雀の羽根のような緑とも青とも言えない玉虫色の美しいイブニングドレスである。


「あら、ありがとう。こんなにたくさん人がいるのにドレスを褒めてくれたのはゲレオンさんだけよ」


 デリルはちょっと皮肉っぽく言う。デリルの巨体に合うように特注で作られているのでかなり値の張る代物しろものである。





────── 【最後までお読みいただき、ありがとうございます!】


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【デリ豊シリーズ・過去作はこちら】 ※第3部からでも楽しめます!


◆第一部:目覚めし竜と勇者の末裔 https://kakuyomu.jp/works/16817330652185609155


◆第二部:復活の魔王と隻眼の魔導士 https://kakuyomu.jp/works/16818093083366171518

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